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キャプテン・ヴァージャス

読了目安時間:6分

また明日

 更に森の深部に向かった処で、開けた場所にゴブリン達がいるのが見える。  ゴブリン達の輪の中に一際大きな体の個体ーーゴブリンロードの存在が確認出来た。  更に様子を伺うと禍々しい杖を持ったゴブリンシャーマン、弓を装備したゴブリンアーチャーがいるのが見える。  普通のゴブリンを入れると20匹か……予想以上に多いな。  そして、僕がキャプテン・ヴァージャスの力に目覚めた時と同じ状況だな。  ススム達は逃げる事を選んだが、ケイン達はどの様に判断するだろうか。 「予想より数が多いしゴブリンロードいるけど……どうする?」 「ゴブリンが予想より多いのは普通だろ。ここで討伐しないと近くの町に被害が出るかもしれない」  僕の問いかけにケインが答える。  森の広場にゴブリン達が集まっているという事は、遠征の準備をしているという事。  放っておけばケインの言う通り近くの町で略奪を行うだろう。  それを理解して戦う事を選んだケインの心意気が嬉しい。  だが、此処でケインとアリーシャを死なせたくはない。  クロエに二人を預けて僕だけで殲滅するか……。  でも、それではケイン達は成長しない。  出来れば二人に経験を積ませたいとも思う。  悩んでいる僕の脇をクロエが肘でつつく。  僕を見たクロエがケインに視線を移す。  クロエがケインを守ってくれるって事か。  なら僕がアリーシャを守れば大丈夫か。  ゴブリン達の背後に回り込むのは途中で見つかるリスクがあるから、僕達は正面から戦う事にした。 『ファイアボール!』  アリーシャが魔法で生み出したのは1m程の大きさの巨大な火玉。  だが、その動きは鈍くゴブリン達の頭上に向かってゆっくり上昇していく。 『ウォーターアロー』  続けてアリーシャが生み出した水の矢もゴブリンを狙っていない。  スピードはあるが明らかに威力が低そうなウォーターアローが先に放ったファイアボールを追いかける。 「一体何を?」と思っている間に、ウォーターアローがファイアボールに直撃する。  威力の低いウォーターアローが蒸発し、高熱の蒸気が頭上からゴブリン達を襲う。  高熱の蒸気を発生させて目潰しをするのがアリーシャの狙いか……転生者みたいな戦い方だな。 「どりゃぁっ!」  ケインが飛び上がりゴブリン達を踏みつけながら走り、後方にいたゴブリンシャーマンを斬り殺す。  鎧を着ておらず身軽とはいえ無茶をするな。  クロエは正面からゴブリン達を薙払っていく。  僕は飛来する矢を叩き落としアリーシャを守る。  そしてアリーシャが魔法を放つ直前に、斜線を遮らない様に脇に避ける。 『フリーズアロー!』  アリーシャの放った氷の矢がゴブリンアーチャー達の弓を凍らせる。 「ギャギャック!!」  戦況を見守っていたゴブリンロードがゴブリン達に何かを命じた後、後方に逃げようとする。  いきなり目潰しを食らったと思ったら、魔法を使えるゴブリンシャーマンを殺され、ゴブリンアーチャーの弓も封じられたのだ。  前衛のゴブリンを軽く薙払い、物凄い勢いで迫ってくるクロエから逃げるのも無理はない。  だが、ゴブリンロードが逃げた後方にはケインがいる。  このままではケインが危ない……このままアリーシャの側で護衛を続けるか、ケインを守る為に前に出るか……。 「ケン、アリーシャを守れ!」  ケインが僕に向かって叫ぶ。  僕は生意気だが真っ直ぐなケインの言葉を信じる。  僕がアリーシャの側で見守る中、ゴブリンロードがケインの元に辿り着く。  ゴブリンロードがケインの首をはねようと手にした剣を振りかぶるが、ケインはロングソードを構えたまま動かない。  ケインがゴブリンロードのロングソードが当たる直前に、一歩前に出てゴブリンロードの間合いに入り手首の軌道にロングソードを合わせた。  ゴブリンロードの手首が切り飛ばされて宙を舞う。  下手に剣を振らずに体幹でロングソードを支えて相手の力を利用したのか。  クロエの指導のお陰で大分進歩しているな。  怒り狂ったゴブリンロードが残った左手で殴るのを、ケインが的確にロングソードで防ぐ。 「おりゃっ」  ケインがゴブリンロードを切りつけ返すが、胸に軽い傷が付いただけだ。  膠着状態となり、ケインとゴブリンロードがにらみ合う。 「ていっ」  ゴブリン達をあっさり片づけたクロエが、気の抜けた声と同時にゴブリンロードを両断した。 「アァッ! 俺の手柄がぁ」 「あぁっじゃないです! 助けて頂いたクロエさんに謝って下さい」 「謝らねぇよ。こういう時は感謝するもんだろ。クロエ有り難うな!」 「どーいたしまして」  全く調子がいい奴だな。  でも皆無事で良かった。  予定より多くのゴブリンを討伐したし、これ以上は危険だから帰還した方が良さそうだな。  疲れが出る前に引き上げるのが冒険者の鉄則だ。 「さて、そろそろ帰還しようか?」 「「「賛成!」」」  僕の提案にクロエ、ケイン、アリーシャの3人が同時に同意してくれた。  森に辿り付くまでに1日掛かっているし、これ以上野宿したくはないから当然か。  それに冒険者だけど全員都会暮らしだから野宿は馴れていないしね。  *  ゴブリンロードを討伐して安全になった森を抜け、僕たちは無事に帝都に戻った。  そして冒険者ギルドに4人で向かい報酬を受け取った。  報酬の割り振りは特に決めていなかったので皆で4等分する事にした。  ゴブリンロードとゴブリンシャーマンの討伐報酬が予想以上に多かったので、ケインとアリーシャは驚いていた。  報酬の分配も終わったし、これでケイン達ともお別れか……。 「さようならケイン、アリーシャ。行こうかクロエ」 「また明日」  別れを告げた僕にケインが声をかけてきた。  えっ、また明日? 「なにぼけっとした顔してるんだよ! 明日も来いよ!」  僕を誘っているのか……思えば他人に誘われるの初めてだな。  生前は病室暮らしで、友達いなかったしな。 「あぁ、また明日!」  そう言って冒険者ギルドから出ようとする。 「絶対来いよ!」  背後からケインの声が聞こえる。  僕は振り返らず、右手を挙げて返事をした。  クロエと一緒に帝都の大通りを宿に向かって歩く。 「ねぇ、泣いてるの?」  並んで歩くクロエが、のぞき込む様に僕の目元を見る。  泣いている……僕が?  クロエに言われて自分が泣いていた事に気付く。 「ケイン達に誘われて嬉しかっただけだよ」  僕はクロエを心配させない様に涙の理由を説明する。 「ふーん、今回のケンの行動は珍しかったわね」 「珍しい?」 「そう。今までなら僕が守るって敵に突撃していたと思う……珍しく堪えたわね」 「信じられたんだ……あの二人は信じられたんだ」  僕はケインとアリーシャの二人を思い浮かべる。  二人は転生者ではない……つまり神様によって作られた存在だ。  それでも自分と同じ人間だと思う。  僕たちと同じように考え、同じ世界で生きているのだから。 「良かったわね」  僕が考え事をしていると、クロエが珍しく冷やかさず、優しい笑みを浮かべていた。  クロエは普段は無神経なようで感が鋭いからな。  心配かけてしまったかな。  僕たちは宿に着いた処で、明日に備えて直ぐ休む事にした。  そう、明日もあるのだから……。

出会いがあれば別れもある。それは前触れもなく……。 次回、別れ ケイン「俺は大丈夫だっ! 必ず追いつくから!!」

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