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アルストラ外伝~ナナイメモリーズ~

読了目安時間:3分

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 ナナイたちは双子に案内され、居間とは違う部屋の中へと入る。 「好きな所に」 「適当にかけるといいよ」  双子が他の姉妹を五人がかけられる長テーブルへと促すが、テーブルの上も大量の本が積み上げられており、備え付けられた椅子に座っても、向かい側の相手の顔が見えない。 「おいミトラ。そっち側を持て」 「あいよー」  本の重さも加わり、大の男が数人がかりでようやく持ち上げられるだろう長机の両端をツヴァイトとミトラは軽々と持ち上げ、力任せに斜めに傾けて本を一気に落とす。  本の山が一気に崩れ落ちると大量の埃が舞い上がり、ナナイがむせる。 「ツヴァイト姉さま!」 「もっと大事に扱え!」 「大事な本ならきちんと整理しろ」  双子が怒りをむき出しにするが、ツヴァイトは知らぬ顔で椅子に腰かけ、足をテーブルの上に投げ出す。横柄な態度は大昔からだ。 「ごめんなぁフィス、フォス」  大柄な体格のミトラは双子に謝罪しながら窮屈そうに小さな椅子に座る。  双子は頬を膨らませつつ二人並んで椅子に腰を下ろし、最後にナナイが座った。 「ナインセラフは……まぁいいか」  ツヴァイトがちらりと扉を一瞥する。彼女らの様子を直接見てはいないが、大方想像は出来る。  居間にいるナインは双子が書いた物語がよほど気に入ったのか、無我夢中で読み続けていると思われるし、サチコとマサムネも、手持ち無沙汰なのか静かに読書を開始しているであろう。 「いいのかい姉さん?」  ミトラが心配そうにツヴァイトに聞く。 「あとでナナイが説明してくれるだろ」 「そこで丸投げするのね……」  ナナイが呆れてため息をつくが、ツヴァイトは気にも留めず、話を切り出す。 「さて、始めるとしよう。前にも話したが、期限は五十年後。はっきりいって時間は無い」 「五十年かぁ。せめて荒地に緑が茂り始めるくらいの時間は欲しかったなー」  ミトラが遣る瀬無い表情でボヤく。齢千歳を越えている彼女らの感覚は独特だ。一つの国が興り滅びるまでのサイクルも彼女らにとっては日が昇り沈んで、また新たな太陽が昇るのと同じ感覚でしかない。 「ユーニス姉さんとルーヴァはどうするの?」 「できれば二人を味方につけたいが、難しいだろうな」  ユーニスとルーヴァは元よりマザー防衛の使命を帯びている。特にルーヴァはエナスに心酔しており、説得は困難。ツヴァイトは初めから二人を当てにはしていないようだ。 「じゃあエナスに加えて二人とも戦わないといけないってことね……」  ナナイは俯く。母とエナスだけではなく、同じ姉妹とも戦わねばならないのか。  悲し気な顔をするナナイを見て、ツヴァイトが声をかける。 「悲観するのはまだ早いぞナナイ」 「え?」  対抗手段があるのだろうか。姉の言葉を聞き、沈みかけたナナイの心に僅かな光が灯る。 「想定される向こうの戦力は五千万だそうだ」  ツヴァイトはナナイを更なる絶望へと叩き落す。希望などではない。  一騎当千の力を持つアルストラといえど、五千万の防衛兵器の前では多勢に無勢というほかない。  受け入れがたい話を聞いたナナイが顔を覆う。 「ははっ。お母さまに気取られないようにわざわざアルストラ置いてきたのに、これじゃあ骨折り損じゃない……」  あまりにも無謀な叛逆にナナイが乾いた笑いを零す。 「そもそも」 「エナス姉には誰も勝てない」  双子がエナスの名を挙げる。仮に五千万のハーベスターの猛攻を凌ぎ、ユーニスとルーヴァを抑えても、彼女を止められなければ勝ち目など万に一つもない。  横たわる現実を目の当たりにした姉妹たちに暗雲が立ち込める。 「状況最悪なのはわかっていたけど……改めて聞くと参ったねこりゃ……」  頭を抱えるミトラ。 「ツヴァイト姉」 「まさか無策じゃないよね?」  フォスとフィスが白い眼でツヴァイトを睨む。 「どーすんのよこの負け戦……」  机に突っ伏したナナイは涙目で愚痴をこぼす。  妹たちが口々に姉に抗議をはじめるとツヴァイトは頬を吊り上げた。 「当然、このままでは勝てないな。このままではな」  含みを込めた台詞。ツヴァイトの真意を読んだナナイの顔が一気に青ざめた。

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