無能勇者の異世界浪漫遊譚

第9話 え?なんでお前がここにいるの?って奴が大抵一人いる

 翌朝になって、マリポーサが俺のことを起こしに来た。  朝から不機嫌そうな顔で叩き起こされて俺も非常に不機嫌だったが、想像の10倍くらい朝飯が美味かったから機嫌が速攻で治った。  後、朝一の生絞りジュースは美味い、なんかオレンジジュース的なあれだったけど、あの果物名前何だったか。 「んで、これから朝の訓練だっけか」  脚を組み、モーニングを嗜む上流階級さながらの姿でオレンジジュースを飲む俺に、マリポーサの辛辣な視線が突き刺さる。 「はい」 「それにしてもさ、お前、頭のそれ外していいぞ?あと尻尾も出してていいから、腹に巻いてると太って見え―――」  んだよ、軽い冗談じゃねえか。   なんでナイフをダース単位で投げつけてくるかね。  ギャグパートじゃないと死人出るよコレ? 「奴隷紋の事は誰かに話したか?」 「いいえ、話してませんが、機を見て話していこうかと思ってます」 「そうか、ンじゃまだ話すのはやめとけ」  少なくとも、それをしたのが俺だとバレると面倒だ。  こいつの話しにも出てきたけど、俺の過去の噂なんかが出回ってたら、そこから500年前の千器と、俺が結び付く可能性もじゃないしな。  そう思いながら、支給された“戦闘服”とやらに着替えを済ませ、俺は部屋を後にする。  非常に不本意だが、これから訓練とやらに行かないといけないらしい。  もっとこう、何の努力もなく最強になれたりはしない物なのかねぇ。  当時の記憶を頼りに演習場に向かう俺の背後には、ヘッドドレスを付け、ふさふさの尻尾を再び服の内側に巻いたマリポーサが俺の背後から歩いて来ている。  他の勇者達はもちろんこの城の作りが分かるはずがないので、メイドたちが案内することになっているそうだ。    暫く歩き、演習場に付いて一安心した。  演習場はただの開けたグラウンドに、それを高いところから見ることができる席がいくつか設けられているだけの場所だ。  よくあるコロッセオではないのが非常に残念だったし、500年で変わったかと思ったけど、どうやら何も変化はないらしい。 「最初はどんな事するんだろうな」 「さぁ、知りません。ですが最初ですし摸擬戦などが妥当ではないでしょうか」 「そりゃお堅い騎士様方にはぴったりの訓練だな」  俺なんか召喚されて日目には魔物討伐に駆り出されて、そこで騎士とはぐれてから1年近くサバイバルだったっての。 「さてさて、今回の勇者達はどんなもんかね」  間違いなく俺よりは強いが、今回は敵が明確ではない。  俺や、当時の勇者の大半が呼び出された勇者召喚の陣は期間が設定されているものだったが、勇者ってのはそれ以外にもいるんだよなぁ。   「お、始まるみたいだな」  クラスメイト達が全員戦闘服を着ているせいか、若干の変質者集団感が否めない。  なんせコレ、全身ぴったりスーツなんだぜ?しかも女子も同じような仕様だし。  さすがに女子は上からシャツやら着てるけどさ、まあ年頃のガキンチョ共にゃ刺激が強いんじゃねえだろうか。 「なぜ前かがみになってるのですか?」 「バカ野郎、健康な証だ」  全く、うちのメイドは無粋なことを言いやがるぜ。  クラスメイト達の中心にいるのは近衛騎士筆頭の男だった。  近衛騎士が言うには、メイドの予想通り俺達の現段階での戦闘能力を見定めるために摸擬戦を行えと言ってきた。  雑用なのかわからんが、ぼろい鎧を着た騎士が訓練用の刃引きされた武器の入っている木箱をいくつも持ってくるのが見え、それが近衛の目の前に並べられた。 「この中から好きな武器を取って戦ってほしい。大丈夫、君たちは神の恩恵を受ける者たちだ。元の世界の常識では考えられないかもしれないが、全力で戦おうと死ぬことはないし、危険だと判断したら私が止めに入る。治癒術師も控えている。何も心配はいらないよ」  まあ、俺から言わせてもらえばだけどさ、どうして実力を見るとか言ってお前らが戦わねえんだよって感じ。  素人同士で戦ったところでお粗末なチャンバラが見れるだけで何も得しねえだろうに。  しかしまあ、この年代の男子は剣とか大好きみたいで、速攻で武器箱に群がっていった。   その人混みがはけた辺りで、女子たちも武器を吟味して、それなりに取り回しの良さそうなものを選んで抜き取っていった。 「全員武器を取ったかな?じゃあ名前を呼ばれた人から中央に来てくれ」  俺も武器を片される前に手ごろな直剣を抜き取ったけど、久しぶりに握る剣の重さに懐かしい気分になるぜ。  近衛はそのまま演習場の中央に歩いていき、クラスメイトの名前を呼んだ。  そして、“クラスメイトではない”その名前に、周囲が一斉に驚愕を浮かべた。  

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