図鑑のスクリプトル

読了目安時間:5分

マンドラゴラを捕まえろ!

「マンドラゴラの子ども……。こんなに人とそっくりなのか……」  頭に葉が生えているその子は、ナナと僕と主様を順番にその大きな瞳で見つめていた。 「大人のマンドラゴラは私たちの前に現れることはあっても、子どもはほとんど現れないんです。大きくなるまでのほとんどを土の中で過ごしているので」  さっきも土の中に隠れながら移動をしていた。  そうやって身を守っているのだろう。 「後は……危険を感じたりすると奇声を発します。聞いてしまうと先ほどの私たちのようにまともに動けなくなってしまい、その間に逃げてしまうんです」  なるほど、泉で聞いた謎の音はこの子のものだったのか。  あれ?じゃあ……。 「……もしかして、ナナは気付いていたの?」  そうだったのなら教えてくれればよかったのに……。  ちょっと不満が入り混じった声でナナに問いかける。 「いえ、奇声を発すると聞いたことがあっただけで、それがどのような音なのかは知らなかったので……。まさかマンドラゴラだったとは……」  そっか、知らなかったんだ……。  疑ってごめんなさい。 「あ、手を伸ばして……かわいいね」  マンドラゴラは土の中から手 (根?)を抜き、ナナに向かって手を伸ばす。  そしてその手で輪を作ると。  ——ィィヤアァァ!!  その輪に向かって大声を出した。  とてつもない衝撃が襲ってきたすぐ後に、大音量の奇声が僕たちの耳を襲った。 「うわあああ!!」 「ひゃあああ!!」 「ごがあああ!!」  耳がああああ!!  三者三様の悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちる。 「キャッキャ!!」  僕たちが倒れる姿を見たマンドラゴラは、喜びながら埋まっている下半分を土から出して走っていった。 「ふにゃあぁぁ……そうだ……。すっかり忘れていたけど防音魔法を張っていたんだった……。マンドラゴラの反応が悪かったのはそれが……でもおかげで助かった……」  頭がクラクラするが、気絶することはなかった。  それはナナも主様も同じのようだ。 「ううぅ……。一瞬で防音魔法が壊されちゃうなんて……これがマンドラゴラの……」  周囲を見てみると、先ほどまで僕たちを覆ってくれていた半透明の膜が消失していた。  奇声だけで防音魔法を破壊するって……。  どんな声量をしているんだ……。 「まうーまうー」  走り去ったマンドラゴラの声が聞こえる。  その方向に顔を向けてみると、その子はこちらにふり向いて再び輪を作っていた。 「うわわ!待って!待って!みんな、耳を塞いで!!」  慌てて防音魔法を展開する  再び半透明の膜が僕たちの周囲を覆い、音が聞こえにくい状態になる。 「ヤアアァァ!!」  マンドラゴラが再び奇声をあげ、膜とぶつかり合う……が、先ほどと同じように膜は衝撃に耐えきれずに破壊されてしまった。 「うわああ!!」 「きゃああ!!」 「グワアア!!」  再び大音量の奇声を聞いてしまいうずくまる。 「ナナぁ……あの奇声にはどう対処すればいいのかなぁ……?」  回らない頭でナナにどう行動すればよいか尋ねる。 「……防音魔法は張りなおせますか……?」  防音魔法を……?張る程度の魔力は……。 「あと1回くらいなら……。けど、あの奇声が発せられるたびに壊されていたら意味ないんじゃ……?」  とはいったものの、僕たち全員を包み込むようなものはもうできない。  1人を包み込む分くらいの魔力しか残されていない。 「それで十分です。主様、私にお力をお貸しいただけませんか?あのマンドラゴラを捕まえたいのですが」  ナナが起き上がろうとしている主様に声をかける。  主様は彼女のことを見て頷いていた。   「そしてソラさんは……」  ナナがこちらに振り向いて指示を出そうとする。  よし、僕は何をすればいいんだ? 「少し離れて待機していてください」  あれ?もしかして戦力外? 「え?あの……待機?あれ?」  自分のするべきことが理解できずに慌ててしまう。 「私が指示を出したら防音魔法を張ってください。お願いしますね」  なるほど、今回は僕が支援ということか。  よし、任せて。  ナナと主様から離れ、マンドラゴラを含めた全員を視認しやすい場所に移動する。 「で、どうすればいいんだい?」 「私と主様でマンドラゴラを捕まえます。その際に——」  ナナがそこまで言ったところで。 「まうーまー」  マンドラゴラは再々度、手で輪を作り奇声を発しようとしていた。 「……!今からじゃバインドも間に合わない……。ごめんなさいソラさん!魔法を発動する準備だけはしておいてください!」 「分かった!気を付けて!」  そういってナナはマンドラゴラに向かって全力で走っていった。 「グオオオ!!」  主様も咆哮をあげ、巨体を揺らしてナナの後を追いかけていく。 「まう?キャー!キャー!!」  マンドラゴラはナナと主様が自分に向かって走ってくるのを見て、奇声を発するのをやめて逃げ始めた。 「もしかして……マンドラゴラは遊んでいるだけなんじゃ……」  マンドラゴラはキャハハと笑いながらナナと主様から逃げていた。  それも満面の笑顔で。 「人もマンドラゴラも子どもは変わらないのかもしれないな……」  おっとっと、今はそんなことを考えている場合じゃない。  ナナからの指示がいつ飛んできてもいいように準備しておかないと。 「子どもとはいえモンスター……!思ったよりすばしっこい……。でも、この薬草地帯からは出ていこうとしない……それなら!」  ナナは何かを思いついたらしく、走りながら主様に振り返って指示を出す。 「主様はマンドラゴラの正面に回ってください!挟み撃ちです!」 「ゴアア!!」  ナナから指示を受けた主様は、マンドラゴラの前に回り込めるように移動をする。  2人が何か企んでいることにも気付かずに、マンドラゴラは笑いながら逃げ続けていた。  そして—— 「まう?あう……あ……」  マンドラゴラの目の前に主様が立ちふさがる。  その姿を見て、逃げる方向を探すために足を止めて周囲を見回していた。 「捕まえたああぁぁ!!」  その隙を見逃さず、ナナがマンドラゴラに向かってダイブする。 「あう?むぅむ!?」  ナナがマンドラゴラに飛びついた衝撃で、薬草や花が舞い散る。 「ナナ!大丈夫!?」  ナナに向かって駆け寄ろうとすると。 「大丈夫です!マンドラゴラは……ちゃんと捕まえましたよ!」  ナナは明るい声で返事をして起き上がる。  その腕にはマンドラゴラが抱きかかえられていた。

ご覧いただきありがとうございます! 今回は、マンドラゴラを捕まえるお話でした。 次回は、マンドラゴラの処遇を決めるお話です。

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