図鑑のスクリプトル

読了目安時間:5分

模擬戦の決着

「君自身がやってみたいことを信じろ!」  僕の言葉でレイカは足を止め、飛んでくる魔法を正面に捉えると—— 「はあああ!」  持っている木剣で全ての魔法を叩き落した。  突然のレイカの攻勢にひるむことなく、ミタマさんは魔法で追撃しようとする。  レイカもミタマさんの行動を気に留めず、僕が貸した魔導書を開いて魔法を詠唱する。  詠唱が先に終わったのは——ミタマさんだった。  先に発動したミタマさんの魔法が、レイカに向かって飛んでいく。  このままではレイカに魔法が直撃する。  そう思った瞬間。 「……アクセラ!」  レイカの加速魔法が発動した。  彼女は一瞬で後方に飛び退り、魔法弾を全て回避する。  回避を終えたレイカはすぐさま訓練所の床に両手を置いてしゃがみ込み、溜めを行う。 「せいっ!!」  レイカは溜めた力を解放させ、一気に走り出す。  魔法弾が着弾した場所を走り抜け、ミタマさんのすぐそばにたどり着くまで真っすぐと。 「はああっ!!」  レイカは高速状態を維持したままミタマさんに接近し、剣で切りかかる。 「くっ……うあ!?」  ミタマさんも攻撃を受けないように剣で防御をするが、高速で移動してきたレイカの勢いまでは抑えることはできず、大きく吹き飛ばされてしまった。 「いたた……あ!?」 「まだまだ!!」  レイカは吹き飛ばしたミタマさんへ追撃を行おうと、勢いを消すことなく走り出す。    その姿を見たミタマさんは、今度こそ魔法を当てるために詠唱を開始する。 「正面から突っ込んで来るだけなら当てるのは簡単どすえ!」  ミタマさんは複数の魔法弾を集中させ、レイカに向かって発射する。  だが、レイカは直進だけを続けることはなかった。  彼女は高速で反復移動を行ったのだ。 「そこです!はあああ!!」  素早く魔法弾を回避したレイカは、ミタマさんに急接近して1撃・2撃・3撃と連続攻撃を行う。  ミタマさんは魔法を撃ったせいで無防備だ。 「うあ……!ううう……!」  連続攻撃を受けたミタマさんは吹き飛ばされて床を転がる。  立ち上がれるか……? 「加速魔法を使っての高速連撃か……。素早い身のこなしができる魔法剣士は少ないからよい攻撃役になれそうだね」  ルペス先輩はミタマさんのことを心配している様子は特にない。  ということは、まだまだ余力が残っているということだ。 「ふふ……さすがやな。うちが攻めとった時とは動きが全然ちゃうやん。推薦されただけはあるみたいやね」  ミタマさんは木剣を重心にしてゆっくりと立ち上がる。  レイカも再び剣を構えなおし、ミタマさんを見定める。 「やけど、ちょい真っすぐすぎるなぁ。絡め手も覚えなだめやで?」  ミタマさんは魔導書を開いて魔法を詠唱する。  高難度の魔法を直接レイカに使用するのならば、注意をしなければいけないけど……。 「エンチャント・ウインド!」  詠唱完了と同時に、風がミタマさんの持つ木剣の周囲で吹き荒れ始めた。  彼女が詠唱したのは風を纏わせる強化魔法。  だが、強化魔法とは言ってもただ木剣に風を纏わせただけ。  剣での攻撃が当たらないことには意味がない。  注意をする必要はなさそうだ。  しかし、ミタマさんは魔法を主に戦うタイプなのだからあまり意味がある行為とは——  あれ?よく見たら風が吹き荒れているのは刃の部分じゃなくて、握りの部分だけのような……? 「ほないくで。……ウインドショット!」  ミタマさんは続けて魔法弾をレイカに向かって撃ち出す。  レイカも飛んでくる魔法弾を丁寧に回避し、少しずつミタマさんに近づいていく。 「今の私が出せる速度はこれが限界……だけど!」  最後の魔法弾を回避したレイカは、真っすぐミタマさんに突進する。  次の魔法弾が飛んでくる前に勝負を終わらせるつもりのようだ。 「これで……終わり!」  レイカはミタマさんに木剣を振り下ろす。  だが——  斬撃は空を切ってしまった。  レイカは突如消えたミタマさんの姿を探そうと、慌てて周囲を見渡していた。 「言うたやん?真っすぐすぎるって」  ミタマさんがいるのは空中だった。  空に浮かぶミタマさんの右手は風が吹き荒れていた。  どうやら彼女が風を纏わせたのは剣ではなく、右手だったようだ。 「纏わせた風を自身の足元に使用して、レイカの攻撃をかわしつつ大きく飛び上がったのか……」  ミタマさんの行動には僕も驚いた。  風の力を利用して相手を吹き飛ばすという攻撃は僕もよくする。  プラナムさんたちを助けるために、コボルトを風で吹き飛ばしたときがそうだ。 「無茶なことしますね……勝つためとはいえ、自分を吹き飛ばすことに使うなんて恐ろしいことでしょうに……」  相手に攻撃するというのは、絡め手を含めて思いつきやすい。  相手は自分ではないのだから、どんな手を使っても自分はケガをしないし痛くない。  そんなことを気にしないで済むので、凶悪な攻撃すら思いつきやすくなる。  だが、そんな攻撃手段を自分自身に向けようとするとどうなるか。  当然、恐れが生まれる。  ミタマさんが行った風を利用して飛び上がるという行為は、傍から見れば面白そうだとかカッコイイとか思うかもしれない。  が、実践している当人からすれば恐ろしいことだ。  魔法が自分を傷つけたらどうしよう。  威力を間違えて天井にぶつかったらどうしよう。  逆に飛び上がれなかったらどうしよう。  自分が同じことをするとしたらと考えるだけでも、こんなに不安要素が生まれてくる。  ミタマさんはこの恐怖を克服したということだ。 「これで止めどすえ、レイカちゃん!」  ミタマさんは空中で魔法を発動し、レイカに向かって魔法弾を連続で撃つ。  上空からの攻撃は、目でとらえ続けられていたとしても対応は難しい。  レイカは回避したり防御したりして魔法弾をしのいではいたが、対応しきれなくなったのか、少しずつ被弾していき—— 「この……あ!?うわあああ!?」  とうとう魔法弾の1つがレイカに直撃してしまった。  魔法弾を受けたレイカは訓練場の床に倒れてしまい、起き上がることはできなかった。 「そこまで!魔法剣士候補者レイカとミタマの戦い。勝者、ミタマ!」  模擬戦はレイカの敗北という形で終了した。

ご覧いただきありがとうございます! 今回のお話は、模擬戦が決着に至るまでのお話でした。 次回のお話は、適正テストの結果発表と、ソラがレイカに真実を伝えようとするお話になります。

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