Borrowed Heart ~あの日に借りたものを、いつか君に返すまで~

読了目安時間:4分

エピソード:14 / 74

第一部 第二章 過去の壁

旅のお供

 森の中を歩く二人組みがいる。  一人は片手に酒瓶を持って歩く若い女性のリール。  一人は四足歩行で金色の毛色を持つ神獣のラッド。  二人はリールの目的である世界中に点在する瘴気を浄化するための旅をしている。 「ふっふふーん。ふんふーん」 「……随分とご機嫌だなリール」 「うん? そりゃそうよー! 今までは一人旅だったけど。今日からはラッドくん……じゃなかった。ラッドと一緒だからねー」 「俺がいたところで何か変わるのか? まだ、何の役にも立っていないぞ?」  旅は始まったばかりで、まだ何も成していない。それなのにリールは嬉しそうに鼻歌を口ずさんでいる。その理由がラッドにはわからない。首を傾げるラッドの頭をリールは優しく撫でまわす。 「すぐにわかるよ。ラッドにもねー! さぁー! はりきって前へ進もーう!」 「……お、おー……?」  意味は理解できないが、リールと関わっている中で意味のわからないことは多々あったと思い出したラッドは深く考えずに歩みを進める。旅は順調に進んでいく。優しい太陽と穏やかな風がリールとラッドを包み込むようだ。    ある程度の距離を進むと一面花畑の場所へ出る。色とりどりの花が咲き乱れた場所でリールは背中から倒れ込むように寝転ぶ。 「うーん。いい気持ちー……。よし! 決めた! 今日はここで野宿するー!」  唐突なリールの発言にラッドが驚き目を見開く。 「何っ!? ここで?」 「そうよー。何か問題あるー?」 「……いや、俺には何の問題もないが……。まだ、日は高いぞ? 進もうと思えば進めるだろうし……。恐らくもう少し進んだ方が野宿に適した場所があるぞ?」  人間では感知できないことも神獣であるラッドには感知できる。ラッドの見立てでは森の中に雨風を(しの)げるような洞窟に加えて近くに水場のある場所を感知していた。共に旅をする者として感知した情報をリールへ進言する。だが、リールは駄々をこねる。 「いやー! 私はここがいいのー! ここは花も綺麗だしー! 気持ちがいいのー!」 「子どもか! はぁ……。まぁ、いいさ。神獣である俺は別にどこでも眠れるしな……」 「やったー! じゃあ、お酒飲もーう!」 「ちょっと待ったー!」 「えー……。何よー……」  大好きなお酒をのお預けを喰らったリールが露骨に残念そうな表情を浮かべるが、ラッドは面倒そうに忠告する。 「うるさい。まずは野宿のため準備をしろ! テントや寝袋を出せ!」  当然のようなラッドの指摘だが、リールは瞬きを繰り返しとんでもない発言をする。 「そんなものないわよ?」 「……えっ……?」 「あれ? 聞こえなかった? テントとか寝袋なんて持ってないわよ」 「……ちょっと待て……。リール。お前……今までどうやって旅をしてきたんだ?」 「うん? あー! もしかして、私のことを気にしてくれてるのー? やだー! ラッドってば優しいー! 嬉しいからお姉さんが頭を撫でてあげるねー!」 「えーい! やめーい!」  子どものような扱いをするリールの手を払いのけたラッドは憮然とした表情で問い詰める。 「そういうことはいい! それでどうする気だ。テントも寝袋もなしで風邪を引くぞ!」 「大丈夫。大丈夫。私って見た目より体は丈夫だしー。それに寒かったり、暑かったりした時は精霊にお願いして調整してもらうからー」 「そ、そんなこともできるのか?」 「そだよー。便利でしょー」 「全く……。つくづく規格外だな。リールは……」  常識では考えれられないことを口にするリールに感心するラッド。するとラッドに褒められたと気分が良くなったリールは気合いを入れて大声を上げる。 「やったー! 褒められたー! じゃあ、お酒を飲む前に食事の準備ぐらいはしてあげるー!」  拳を突き上げたリールは、徐に花を摘み始める。花束程の花を摘むと祈り始める。 「世界を育む慈愛の心を持つ大地よ。あなたの懐で育ちし花の恵みを我らに与えたまえ……」  祈りが通じると手に持っていた花束から花の蜜が生成される。精霊の恩恵によって得られた花の蜜を小瓶 に入れる。だが、蜜だけでは寂しいと感じたのかリールはもう一度祈る。 「世界を育む慈愛の心を持つ大地よ。あなたの影で育ちし実りを我らに与えたまえ……」  すると大地からいくつもの(きのこ)が生えてくる。花の蜜と茸を手に入れたリールは胸を張ってラッドへ見せつける。 「どやー!」 「……はぁ、凄い。凄い。しかし、本当に……リールの精霊魔法は何でもありだなぁー……」 「でしょ、でしょうー! まぁ、でも……。私が凄いんじゃなくて精霊達のおかげなんだけどねー」 「それはそうだが……。それでも、ここまで精霊を操るのは凄い技量だぞ? 瘴気を浄化することと何か関係があるのか?」  特に深く考えたわけではなくラッドは質問した。だが、その質問こそがある意味でリールの根底に関係する質問だった。一瞬だけリールの笑顔が消失して真顔となる。だが、すぐにいつもの笑顔を浮かべる。 「……そっかー。そういえば……旅の目的を詳しく話してないものね……。いい機会だから少し昔話をしてあげるわ」 「昔話……。リールのか?」 「そう! 私の昔の頃の話よ! もー。それは可愛い美少女だったんだからー! あっ! 今も美少女よね?」 「……それはツッコミを入れなければならんのか?」  真顔でラッドに返されたリールは不機嫌そうな表情で頬を膨らませる。    だが、気持ちを切り替えて語り出す。 「私ね……。こう見えて昔は病弱だったの。幼い頃に医者や神官から言われたの……生きれても二十歳までだろうって……」  過去を思い起こしたリールが少しだけ悲しげな表情を見せる。

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