Borrowed Heart ~あの日に借りたものを、いつか君に返すまで~

読了目安時間:5分

エピソード:21 / 74

三人の絆

 自らの心と向き合い……本当の願いを口にしたリリーとアリー。  二人の願いを叶えるためにリールは白骨化しているアレンを見据え精霊に祈る。 「世界を優しさで包む水よ。世界を育む慈愛の心を持つ大地よ。世界を駆け巡る自由な風よ。世界を照らす希望の炎よ――」  今までとは違い複数の精霊へ同時に祈るリールの姿を見たラッドは思わず声を上げる。 「なっ!? む、無茶だ! いくら、お前でも複数の精霊を――」 「――黄泉の世界へ旅立ちし者の魂を呼び戻したまえ……」    心配するラッドの言葉を余所にリールは複数の精霊へ祈りを捧げアレンの魂を降臨させる。死んだ人間が生き返ることはない。しかし、魂だけであるなら短時間ではあるが降臨させることは可能だ。最も短時間とはいえ、死せる魂を現世へ降臨させるという、この世の(ことわり)を無視するかのような魔法だ。実現するには膨大な魔力が必要となる。その証拠に今までのような余裕はリールにもない。眉間に皺を寄せ険しい表情で膨大な魔力を放出しながらリールは祈り続ける。だが、その甲斐もあり死んだはずのアレンを魂だけとはいえ、降臨させることに成功する。  降臨したアレンの魂は白骨化した死体と重なる。すると青白い光と共にアレンの骨が生前の姿を取り戻す。金色の短髪と青い瞳が特徴的な少年のような面立ちをしたアレン。死んだはずの体を不思議そうに眺める。 「これは……。そうか……。魔法の力で……」  最初は驚いていたアレンだが、大体のことは察している様子だ。一方でリリーとアリーの二人は目を疑う。もう二度と会うことができないと思っていたアレンと再会することができて……。不思議そうな表情でアレンを見つめるリリーとアリー。しかし、アレンが微笑むと二人は歓喜して飛びつく。 「アレンなのー! 嬉しいのー!」 「会えたのー! アレンに会えたのー!」 「うん。……僕も嬉しいよ。リリー。アリー」   再会を噛みしめ合う三人。しかし、残されている時間が僅かであると理解しているアレンはリリーとアリーへ生前に伝えることができなかった思いを伝えるべく言葉を(つむ)ぐ。 「リリー。アリー。もう知ってると思うけど……。僕は死んでるんだ。だから、これが最後の会話になるからよく聞いてね」 「いやなのー!」 「そうなのー!」 『一緒にいたいのー!』  子どものように駄々をこねるリリーとアリーにアレンは優しく語る。 「うん。わかってる。でも、聞いて欲しい……。覚えてるかな? 初めて出会った日のことを……。僕が山道で傷ついていた時のことを……」 「……覚えてるのー……」 「……酷い傷だったのー……」 「そう。それで、リリーとアリーが助けてくれた……。感謝してるよ。だって、あのままなら僕は一人寂しく死んでいた……。でも、二人のおかげで元気になれた。それに死ぬ最期の瞬間まで楽しく過ごすことができた……」  死という言葉を聞いたリリーとアリーの表情は悲しみの色に染まる。アレンの死という現実は不変であることを思い知らされる。今にも泣き出しそうなリリーとアリーにアレンは尋ねる。 「ねぇ、リリー。アリー。一緒にお花畑に行った時のことを覚えてる?」 「……お花畑……覚えてるのー……」 「……綺麗だったのー……」 「うん。綺麗だった。楽しかったよね?」 「……うん。楽しかったのー……」 「……嬉しかったのー……」 「そうだよね。じゃあ、湖の(ほとり)でお昼寝したことは?」 「……覚えてるのー……。アレン。寝ぼけたのー」 「そうなのー。危うく湖に落ちそうになったのー」 「そうそう! それから――」  アレンの口から語られる思い出の数々にリリーとアリーは思い返し笑顔になる。そんな一時(ひととき)の語らいも終わりに近づき別れの時がくる。この世に留まる限界がきたアレンの体は徐々に薄れていく。 「――そろそろかな……。リリー。アリー。今まで本当にありがとう。楽しかった。それだけは君達に伝えておきたかった」 「いやなのー!」 「アレンと別れたくないのー!」  アレンの死を受けれ入れられないリリーとアリーは激しく拒否をするように首を横に振る。本当に大切に思っているが故に、アレンとの死別に納得できない二人。だが、アレンは笑顔で伝える。 「大丈夫だよ。僕は死ぬかもしれない。でも、いなくなったりはしないよ?」 「……なのー……?」 「……わからないのー……」  言葉の意味が理解できないリリーとアリー。 「僕は君達の心の中で生き続けるから……」 「……心の中……」 「……なのー……?」 「うん……。僕と過ごした楽しい思い出を忘れないで欲しい。寂しくなったら、その時のことを思い出して……。そうすれば、僕はいつでも君達と会えるから……。ねっ? 約束だよ? リリー。アリー。二人が忘れなければ……僕は君達の思い出の中で生き続けるから……」  約束を誓うためにアレンは小指を差し出す。リリーとアリーはアレンの小指に自分達の小指を絡めて誓う。 「……うん……」 「約束なのー……」 「……ありがとう……。僕も忘れない……。君達と過ごした日々は大切な宝物だから! リリー。アリー。元気でね!」  リリーとアリー。二人のためにアレンは最期まで笑顔でいた。  そして、消えゆく中でアレンはリールへ感謝を伝える。 (……ありがとうございました。……あなたのおかげです。リールさん)  アレンからの感謝の言葉を聞いたリールは微笑む。 「……いいの。だって、私もあなた達を助けたかったから……。じゃあね。アレン君……」  こうして、アレンの魂は天へ還る。  別れることになった三人だが、もう悲しくはない。  人間と精霊。  違う時を生きる者同士ではあったが、アレン、リリー、アリーの三人は繋がることができたから……。  目には見えない信頼という絆で……。

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