Borrowed Heart ~あの日に借りたものを、いつか君に返すまで~

読了目安時間:6分

エピソード:12 / 83

友人との語らい

 今までに起こったことを、どのように解釈すればよいのかわからず人鼠は震えることしかできなくなる。小さな子どものように震えて怯える人鼠へフェイが忠告する。 「貴様等。なぜ、リールを狙ったのかは知らんがやめておくことだ。少なくとも私にすら勝てない貴様らではリールの足元にも及ばんからな」  まるで不死鳥であるフェイよりも人間であるリールの方が強者であるような発言だ。その言葉に違和感を感じた一人の人鼠が恐る恐る問いかける。 「あ、あの……不死鳥様……」 「何だ?」 「そ、その……。あ、あの人間は……何者なのですか?」 「……貴様等……。そんなことも知らず、リールにちょっかいを出そうとしていたのか? はぁ……。馬鹿もここまで来ると憐れとしか言いようがないな……」  少し思案したフェイはリールに確認をとる。 「リールよ。話しても構わんか?」 「うん? 別にいいよー」 「そうか。……では、教えてやる。リールは――」  耳を疑うフェイの説明を聞き終えた人鼠は魂が抜けたような表情で体が強張ってしまう。話の内容が大き過ぎて、ある者は意識を失い。ある者は感情を制御できず泣き出してしまう。混沌とした状況を目にしたリールが不貞腐れたように頬を膨らませる。 「ぶー。ちょっとー。フェイちゃーん! どういう説明をしたのよー!」 「ふむ。どうやら刺激が強すぎたか」  完全に戦意を喪失した人鼠は恐怖し、その場を後にする。  その際にリールから一つだけ忠告される。 「あっ! そうだ。これからは、ラッドくんのことをフィーダーって呼ばないこと! いい!」  何気ない言葉だが、リールから忠告された人鼠は恐怖のあまり全員が涙を流し許しを請う。その怯える様にリールは溜息しか出ず、フェイは楽しそうに笑っていた。  人鼠がいなくなり、ようやくリールとフェイの二人だけになる。  二人は外を歩きながら他愛のない会話を楽しむ。 「懐かしいな……。リールよ」 「そうだね……。そういえば、フェイちゃんって今は何をしてるの?」 「私か? 私は世界中を飛び回っているよ。困ったことに、他の奴らがサボってばかりだからな」 「あははー! そっかー。みんな変わってないんだねー。それに、フェイちゃんの炎も相変わらず強力だしねー」 「蘇りの炎か? まぁ、制約はかなりあるがな。今のは死んですぐだったから蘇らせることはできたが……。時間が経過すればするほど蘇ることは困難になる。それに自然死した者を蘇らせることはできない」 「あー。そういえばそうだったねー」 「あぁ……。ところで、リール。今は何をしているんだ? まぁ、聞くまでもないか……」  少しだけ寂しげな表情をするフェイだが、隣にいるリールは相変わらずの笑顔だ。 「うん! 今も瘴気を浄化してるよ! いやー、疲れちゃうからお酒の量が増えて増えて困っちゃうよー!」  欠片(かけら)も困った様子のないリールの発言にフェイは笑顔になる。 「そうか。何にしろリールが変わらないでいてくれて私は嬉しいよ」 「そう? そう言ってもらえるのは嬉しいなー。ラッドくんは私のことを、いつも怒ってばかりなのよー。あっ! ラッドくんっていうのはねー。この間、私が助けた神獣の子でね。小さくて小生意気だけど、すごくいい子なんだよー! フェイちゃんにも会わせてあげたいけど。残念ながら明日の朝までは起きないからなー」 「そうか。リールがそう言うのならいい子なのだろうな。……だが、その子はフィーダーなのだろう?」  フィーダーという発言に場が重苦しい雰囲気となる。  だが、すぐさまリールが笑顔で頷き肯定する。 「うん。そうだよ。フェイちゃんも……フィーダーは嫌い?」  少しだけ不安そうな表情のリールにフェイは微笑み返す。 「ふっ。私はフィーダーを特別に嫌ったりはしないさ。……しかし、多くの者はフィーダーを快くは思わないだろう。それは、リールの方が理解しているだろう?」 「うん……。そうだね……」  珍しく表情を曇らせるリールだが、軽く頭を振るとすぐにいつもの笑顔を浮かべる。 「ねぇ! フェイちゃん。良かったら。ラッドくんに会っていってよ!」 「いや、やめておこう。誤解しないでくれよ? 別にフィーダーだから会わないわけではない。私は構わないが……。恐らくその子が気にするだろう。リールの話を聞く限りでは、その子はまだ己の運命を受け入れてはいない様子だ。そんな状態で不死鳥の私が会うというのは不適切であろう」 「そっか……」 「大丈夫さ。リールがいるなら……」 「そうかなー……」  懐かしい友人との偶然の再会に喜んだのも束の間……。  フェイと別れたリールは歩きながら何かを思案する。 「よし……。決めた!」  何かを決意したリールは、腹を出しながら眠りに着き朝を迎える。  お天道様(てんとうさま)が一番高い位置……つまり正午になると苛立った様子のラッドがリールを叩き起こす。 「貴様! いい加減に目覚めんか!」 「……う、うーん……。なーに……? あぁ、……ラッドくん。おはよう……」  寝坊助のリールを前にラッドは額に青筋を浮かべる。 「貴様は……毎度のように――」  日課のようになったラッドのお小言が始まろうとした瞬間、リールは体を小刻みに震わせながら右手を上げる。 「――な、何だ? どうかしたのか?」  心配してリールの顔を覗き込むラッド。だが、震えるリールが口にした言葉は……。 「ご、ごめん……。お腹冷えた……。トイレに行かせてー!」  絶叫しながらリールはトイレへ駆け出す。相変わらずなリールを見て怒る気も失せたラッド。だが、ラッドには一つだけ確認しなければいけないことがある。  それは……。 「ふぅー。すっきりしたー! おはようー! ラッドくん!」 「……あぁ、おはよう」 「あれー? どうしたのー。何か元気ないけどー。それとも……、まだ怒ってるのー?」  いつもより活気のないラッドに疑問をぶつける。するとラッドが真剣な表情でリールを見据える。 「……正直に答えろ」 「なーに?」 「昨日、人鼠がいただろう……。奴らに会ったか?」 「会ったわよー」 「……何か言っていたか……? 俺について……」 「ラッドくんのことー?」  心臓の鼓動が早鐘を打つ。  不安でラッドの心が押しつぶしされそうになる。 (……俺が……フィーダーってこと……リールに知られたら……俺は……)  自分の正体をリールには知られたくないと願うラッド。  そんなラッドの気持ちを知ってか知らずか……。  リールはいつもの調子で答える。 「あー。言ってたわよー」 「――ッ!?」  雷が落ちた様な衝撃が全身を駆け巡るときつく目を閉じたラッドは決心する。 (……出て行こう……。もう、一緒にはいられない……)  覚悟を決めたラッドへリールは告げる 「そいつは許せねぇーとか。落とし前をつけるーとか。すごい怒ってたわよー。まぁ……。でも、安心してよ。喧嘩両成敗って言っておいたから!」  満面の笑顔でラッドに対して親指を立て見せリールは誇らしげに胸を張る。  いつもであれば悪態の一つも吐くところだが、自分の秘密が漏れなかったということに安堵したラッドは大きく息を吐く。 「ふぅー……。そ、そうか……。なら、いい……」  心を落ち着けようと外へ出ようとするラッドをリールが呼び止める。  大事な話をするために……。 「あっ! 待って! ラッドくん」 「……何だ?」 「私、旅に出るから。今日でお別れよ」 「……えっ……?」  突然の決別宣言にラッドの頭は一瞬で真っ白になる。

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