Amazonギフトカードが当たる会員登録キャンペーン実施中!詳しくはこちら

ママは花の錬金術師で私はホムンクルスでした!?  ~母と娘が紡ぐ親子百合神話錬金術ファンタジー~

読了目安時間:2分

 Ⅲ ブールの味は

 あのあと、黄金の麦畑が戻ってきた。アイリスさんのパンも味が良くなった。街の人たちも喜んでいた。私たちはせっかくだからケレスの子どものたちに会いに行こうと思った。けれど、そこには誰もいなくて。ただ一面に広がる金色。寂しくて。美しかった。  ひとつだけ、はげ地が残っていた。気になって近くに行ってみると、黄金の小さな穂の形をしたブローチが落ちていた。なんだか、羽のようにも見える。初めは、小麦でできているのかなぁと思ったけど硬かった。本当の金。なのかな。またお母さんに調べてもらおう。今日は、なんかちょっとだけそういう気分じゃなくて。私はブローチを握りしめた。  アトリエに戻った私は一目散に駆けだしてアリエスさんのところに行った。いつものレーズンを出してくれたけれど。今日は、初めてブールを食べてみた。  本当なら、ブールの方がおいしいって思いたかったけれど。えっと……その。レーズンパンの方がおいしい。でもなんか、これも悪くないなって思った。小麦の、味がする。匂いがする。ケレスからふわりと香った、温かな香りがするような気がしたから。 「また来てね。アイリス」 「うん。あ、これ。始まりの麦だ」 「えぇ」 「えっと……捧げんなくてよかったの?」 「ふふ。捧げなくてよかったの? ってききたいの?」 「うん。それ」 「もちろん捧げたわ。でも、もしここに飾ってなかったら困ると思わない?」 「誰が?」 「ケレス様が、よ」 「あはは。そうだね。もしかしたら、ないしょでブールを食べに来るかも」 「ふふふ。そうかもね、えっと……改めて、ありがとうね。アイリス」 「ううん。お母さんのおかげだよ。私はなにもしてない」 「ううん。いつもあなたに助けれていたわ。あなたがいるとなんて言うのかしら……その、花があるというか。元気になるの」 「むぅ……子ども扱いしてるでしょ」 「ふふ。いいじゃない。あ!」 「ぴぇ!?」 「ごめんなさい。驚かせちゃったわね。良いこと思いついたの。捧げる用のものはシンプルに。でも、お家に飾るものはもっと華やかでもいいんじゃないかしら。ね、そうすればアイリスが元気だよってお知らせできるじゃない」 「うん! それいいね!」 「ふふふ。善は急げね。早速マリアさんのところに行かなくっちゃ」 「お土産持っていっていい?」 「もちろんよ。その代わりに乾燥させたお花をもらっていっていいかしら」 「うん!」  そうしてまた私たちは柔らかな日常に戻っていった。少し嬉しくて、少し悲しい。そんな他愛もないお話。豊穣の神。ケレスと私。いつか、また会えるかな。そんな事を考えながら、私はアリエスさんの手をにぎった。 『アイリス。あなたの願いが叶いますように。心からの祈りを』   「なんか言った?」 「いいえ。私はなにも」 「そっか、お母さんのアトリエにいこ!」  ――パン屋と麦穂と五穀豊穣と END――

Amazonギフトカードが当たる会員登録キャンペーン実施中!詳しくはこちら

コメント

コメント投稿

スタンプ投稿


このエピソードには、
まだコメントがありません。

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る

  • ライゼン通りのお針子さん

    お針子の少女の物語

    2,900

    0


    2021年9月29日更新

    あらすじ コーディル王国の下町。ライゼン通りと呼ばれる職人通りに小さなお店【仕立て屋アイリス】がある。 そのお店の店主はなんと見習いのお針子の少女。元店主の考えによるものなのだが新人である彼女がちゃんとお店を経営していけるのかとても不安。 失敗ばかりだがお客様のために心を込めて頑張るけなげな新米店長少女とお店に来る愉快なお客達の日常を描いた心温まる物語である。 アルファポリス様にも掲載しているライゼン通りのお針子さんをもっとたくさんの方にも読んでもらいたくてノベルアップ+さんにも掲載開始しました。 気が付いたらシリーズ化していた作品です。最初は読みきりだったのですがね(爆)

    読了目安時間:2時間36分

    この作品を読む

  • 雨音は鳴りやまない

    神は、すぐそこにいる。

    700

    0


    2021年9月28日更新

    わたしは知っている。平凡な人間にできることなど、何もないと。 木下周(きのした あまね)は異世界に迷い込んだ。 眠りについたまま。夢の中から、身体ごと。 まったく望んでいなかった。 平社員なOLだとしても、恋人がいて、音楽という趣味があって。人並みに将来への不安はあるけれど、それなりに楽しく生きていたのに。そして何より。 「明日、久し振りのライブなんですけど!?」 寝坊をして遅刻だなんて、絶対に嫌だ。夢なら覚めて、と願う周。 けれども、目覚める気配は全くない。 代わりにあったのは、魔法だった。 神様や精霊がすぐ傍にいる世界。 あらゆる芸術が妙な発展を遂げた土地。 美しさをすべての指標とした決まりごと。それに従う人々。 今の周にとっては現実でしかないという、現実。 次から次へと出てくる馴染みのない要素に戸惑いながら、彼女は一つの決意をする。 ……絶対に、元の世界へ帰るよ。 大それたことなどできるはずがない。それでも、ただ自分の家に帰るだけなら。 そのためなら、少しくらい頑張れるから。 そんな消極的な肯定をもって、周は異世界での生活を始める。 彼女の行きつく先は、果たして――――?

    • 残酷描写あり

    読了目安時間:8分

    この作品を読む

読者のおすすめ作品

もっと見る

  • 終末街の無軌道少女隊~ゾンビや化物が跋扈する封鎖された城郭都市で、重犯罪人の女性たちが好き勝手に生き抜くそうです~

    反社会的web小説の金字塔!(独断)

    27,500

    2,622


    2021年8月27日更新

    これは一癖も二癖もある元女囚人達と、集団唯一の良心である一般人の少女が、何にも囚われず好き勝手に生きる新感覚日常物語である。 時をさかのぼること数年前、世界屈指の犯罪大都市に、突如として摩訶不思議な力を行使する異形の化物共が現れる。 囚人街と蔑まれた都市は、一夜にして終末街へと早変わりをした。 事態を重く見た時の政府はすぐさま軍隊を投入するも、じわじわ被害が拡大していく。 時を同じくして、各地から信じられない報告が相次いだ。なんと哀れな犠牲者達が再び起き上がり、仲間であるはずの人間を次々と襲い始めたというのだ。 後にゾンビ症と呼ばれ、意思を持たぬはずの死体が空腹に突き動かされ、新鮮な人肉を求め彷徨い歩くという、未だかつて人類が経験した事の無い最悪の事態だと判明する。 あまりの被害の大きさに政府は即応集団のみならず、各地方面軍を招集。次いで国際社会の呼びかけに応じる形で、多国籍連合軍を結成した。更には足りない人員を埋めるため、減刑を餌に囚人をボランティアと称し当該地域へ投入する事で、事態の収拾に当たっていた。 しかしなんの成果も挙げられず、ゆっくりとだが確実に被害地域は広がっていった。 押されつつも一進一退の攻防を続け約一月。遂に最終防衛ラインが都市外部へと差し掛かろうという所で、世界と都市の人々の運命を決定付ける、ある決断が下された。 化物の進行を止めるため、政府によって秘匿されていた独立特務機関である『九曜機関』の手によって、荒端境と呼ばれる大結界を使い、都市ごと化物とゾンビを隔離したのだ。数万人の生存者を残したままに。 その後すぐに、万が一に備え建てられた、通称『隔絶の城壁』で都市周囲を完全に封鎖。この壁によって化物の侵攻を防いでいると、表向きには発表されていた。 そして現在。都市に点在する生き残り達の集落から離れた、小高い丘の上にある豪邸。そこでは政府から見捨てられた数人の女囚人たちが、身を寄せ合って共に過ごしている。 様々な事情を抱える彼女達だが、今日も地獄の一丁目で、現状に折り合いをつけ生活しているのだった。 不幸と騒乱を、周囲にまき散らしながらであるが……。

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり
    • 性的表現あり

    読了目安時間:1時間13分

    この作品を読む

  • メタルナ・アイーツが降ってきた

    最悪の魔王『暗躍』

    10,200

    0


    2021年9月27日更新

    その日、世界を滅びへと導く最後のピースが揃った。 地球に今までない概念『レベル』と『ステータス』の出現、そして空から降り注ぐ倒す事で『レベル』向上を促す魔物『メタルナ・アイーツ』は現代社会の価値観を大きく歪ませた。

    読了目安時間:35分

    この作品を読む