前世が交通課員で、その前世が銭形平次(仮)だったことに40歳半ばで分かった霊感のある盗犯刑事。その捜査活動について報告する。

読了目安時間:3分

第34話 ミーティング

 ザラメへの内偵捜査を始める前に、新宿署刑事一課奥にある乱雑な捜査会議室でミーティングが開かれた。浦和署捜査本部の山下班長及び選抜されたベテラン捜査員と、警視庁捜査三課の下総・犬塚・刑部らの顔合わせも兼ねている。所轄の刑事である羊野は、亀有署から離れられないため、この捜査には加わっていない。  埼玉県警の捜査員がホワイトボードに事件のあらましを記し、佐藤勝己の顔写真を貼りつけた。  議題に上がったのは、内偵捜査の方法だ。 「ザラメの向かいにも二階建ての似たような店舗があります。ここの協力を得て、二階に常に張り込んではどうでしょうか」  ホワイトボードの左脇に立つ山下班長は、右脇に立つ下総に言った。この二人が捜査班の陣頭指揮をとっている。  下総は(あご)に手をあてがい、椅子に座っている刑部に視線を向けた。  刑部は腕を組み、首を小さく横に振った。口を開き声を上げようとする。 「山下班長、ザラメの付近には幾つかフッコ会のシマが点在しています。向かいの店も該当していましてね」  刑部が口を開く前に、隣に座っている犬塚が発言した。 「間借りしたとして、すぐに洩れるでしょう。それはまずい」  犬塚は続けて言った。無表情だった。  刑部は組んだ腕を解き、頷く。 「山下班長、ここは足で稼ぎませんか? 幸い、歌舞伎町交番を拠点にできることですし」  下総は訊ねた。  早くも警視庁側と埼玉県警側で捜査方法に食い違いが出た。  これは紛糾するかな。  刑部は思案しながら山下班長を見る。山下班長と視線がかち合った。  刑部は山下班長に頷いてみせた。こちらのやり方で通させてほしいという意思表示である。 「了解しました。ここは警視庁管内です。郷に入っては郷に従いましょう」  山下班長はあっさり頷いた。ともすれば、浦和署での会話で好印象を与えていたのかもしれない。  他の捜査員も同様であり、しきりに頷いている。 「随分と物分かりの良い連中だな」  犬塚は顔を前に向けたまま小声で言った。  そりゃあ、新宿署員じゃないからな。  刑部は、脳内で作った発言を思いとどまり。別の発言に切り替えることにした。 「到達点は一緒──そう考えているのだろうさ。彼らにしてみれば、迷宮からの出口が見えたわけだからな。つまらん意地を張って、これまでの〝蛇の執念〟を無駄にしたくない、ということだよ。俺は他県警に行った時は、大きな間違いと思わない限りそうしてきた。犬塚だってそうだろ」  刑部は囁くように答えた。犬塚は無言で頷いた。 「捜査手法は、歌舞伎町に慣れている犬塚、それと刑部に任せたいと思いますが、いかがでしょう?」  下総は、山下班長に訊ねた。山下班長はこれにも頷いた。 「では、説明の前に」  刑部は立ち上がって、ホワイトボードまで歩む。浦和署捜査本部の捜査員が記した事項を全て消した。佐藤勝己の顔写真も取り除く。  山下班長以下捜査本部の捜査員は、「あっ」と声を上げた。 「マル勝の全て、もう頭の中に刻み込まれているから問題ないでしょう?」  刑部が言うと、下総は深いため息を吐いた。埼玉県警側は全員目を丸くしている。 「それと、保秘(ほひ)の徹底です。どこから被疑者(マルギ)側に情報が洩れるかも分かりませんからね」  埼玉県警側がまだ目を丸くしている。その中で刑部は、犬塚を見た。  犬塚は不敵な笑みを浮かべていた。

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