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ハピネス・テイマーズ・ライフ!-世界最強の魔物使いを目指していたら、いつの間にか世界一の美女になっていた件について-

読了目安時間:10分

第1話 世界最強の魔物使い

「なあ、俺たちのクランに加入しないか? この御時勢、何処にも所属しないでソロでやってたって長続きなんかしないぜ? 大勢の仲間と一緒にやった方がダンジョン攻略もしやすくなるし、上位のモンスターも狩れるようになるからレアなお宝を手に入れられる機会も増えるってもんだ。あんたにとっても悪い話じゃないって思うんだけどな」  とある辺境の町にある小さな料理屋で、少しばかり遅めの昼食を食べていた私に、見知らぬ若者が声を掛けてきた。  一目で値打ち物だと分かる漆黒の鎧に身を固めて、背に彼の身長と同じくらいの長さがある大きな剣を背負った……まあ疑う余地もなく冒険者職(ジョブ)黒騎士(ダークナイト)であるということが分かる出で立ちの若い男だ。  どうして剣術士(フェンサー)白騎士(ホーリーナイト)じゃなくて黒騎士(ダークナイト)だと断言できるんだって? ……それは、冒険者だったら武具を見ればすぐに分かることだよ。あの鎧、右の肩当てに闇魔術文字の刻印が入ってるから闇属性の魔力が宿ってることが丸分かりだし、所持してる武器が人間と同じ大きさだからね。どっちも黒騎士(ダークナイト)じゃないと装備できない武具だから。 「あたしたちのところ、ランク上位の顔ぶれが揃ってて世界的にも結構有名なクランなのよ。世界屈指の魔物使い(テイマー)と名高い貴女にとって、身を落ち着けるのにこれ以上に適した場所はないって思うんだけど?」  黒騎士(ダークナイト)の連れと思わしき黒檀色のローブを纏った女が、私を値踏みするような眼差しを向けながら彼の言葉の後に続く。  あれは、現時点で最難関だと言われている大人数攻略型(レイド)ダンジョンで稀に入手できるって噂の黒魔術師(ウィザード)用の装備だ。帽子、ローブ、グローブ、ボトムス、ブーツ……一個でも入手困難だという品が一式揃ってるなんて、一体何回あのダンジョンを攻略しに行ったのだろう。  それだけの芸当がこなせる彼らのクランは、その主張通りにかなりの実力者揃いだということだけは、知ってるけれど。  超難易度コンテンツ攻略専門クラン『天空の覇翼』。ダンジョン攻略や討伐難易度が高い悪名高い魔物(ノートリアス・モンスター)の討伐を主な活動内容として掲げている冒険者集団だ。彼らのコンテンツ攻略の様子は結構な頻度で動画配信されていて、その動画を参考にコンテンツに挑戦している人も少なくはない。  初心者に対して基本的なことを教えたりとか、一応は一般的な活動もそれなりにはしているようだけど、彼らは「攻略命」の集団だから一定以上のランク認定をされている人間じゃないとクラン加入を認めてはくれないと噂で聞いたことはある。折角クランに加入できたのに、コンテンツ攻略中にちょっとしたミスをしてしまっただとか、期待されていた以上の働きができなかったとか、とにかく『役立たず』認定されてクランから追い出されてしまった冒険者も中にはいるらしい。  ミスなんて、人間なんだからすることがあるのは当たり前でしょ。機械だって失敗することがあるんだから。  私は小さく溜め息をついて、手元のお茶を啜った。 「折角クランリーダーの俺が直々にスカウトしてるんだ。うちは家持ちのクランだから、うちに来ればもうそんな風に一人で淋しく飯を食うこともなくなるし、ベッドで寝るためにわざわざ宿代を払う必要もなくなる。何よりダンジョンやノートリアス討伐でびっくりするくらいの大金が稼ぎまくれる。……こんな美味しい話、あんたくらいのランクのプレイヤーともなれば是が非でも物にしなきゃ勿体無いってことくらい、分かるだろ?」  私から返答が全くないことに多少じれったさを感じているのか、黒騎士(ダークナイト)がまくし立てるようにして誘い文句を重ねている。  きっと、今までクラン勧誘で断られたことがないんだろうな。お金が嫌いな冒険者なんていないから、大金持ちになれるかも、なんて言葉を聞いてしまったら「誘われてるんだし入ってもいいかな」ってつい頷いてしまいたくなる気持ちは分かる。  普通だとまず手に入らないようなアイテムが手に入れられるようになるかもしれない──そりゃ私だって、全然興味がない、とは言わない。  でも、彼らが掲げている『効率主義』の考え方にはあまり共感できないのだ。  そういうプレイスタイルを否定する気はないけれど、そういうのはそういう考え方を持っている人たちだけで勝手にやってほしいと思う。興味を持っていない他人にまでそれを押し付けようとするのはやめてほしいんだけどなぁ。  どうやってこの勧誘を受け流そうか。カップに口を付けたまま考えを巡らせていると、 「ちょっと、人の相棒を口説くのはやめてくれる?」  ライ麦パンのサンドイッチを盛り付けた皿とお茶が入ったカップを手にした純白の髪の美女が、わざとらしく肩を竦めながら私たちの会話に割って入ってきた。  まぁ、会話と言っても黒騎士(ダークナイト)たちが一方的に話しかけてきてるだけなんだけれど。  美女の方に視線を移した黒魔術師(ウィザード)が、うっと小さく呻いて表情を引き攣らせた。 「嘘……白銀(しろがね)の災禍姫……!?」 「ゴメンネ、アタシ、その仇名は好きじゃないの。アタシにはヴィニアス・フルールってちゃんとした人間としての名前があるんだから、名前の方で呼んでくれるかしら?」  白銀、の二つ名に相応しい、髪から纏っている装束から全てが真っ白で美しい、長身の美女。ハスキーな声音は同じ女でも聞くとうっとりしてしまう、そんな不思議な魅力がある。  ヴィニアスは私のテーブルまでまっすぐに歩いて来ると、手にした料理を私の向かい側の席に置いた。  そして、黒騎士(ダークナイト)たちの方を一瞥して、 「この子はアタシが認めた唯一無二の相棒。もちろん、彼女からの正式な同意を得てそういう関係を結んだ間柄よ。何処のクランにも所属する気はないし、そもそもクランになんて所属しなくたって暮らしていけるように、この世界はできているんだから。此処にいる誰も彼もがエンドコンテンツ攻略に興味がある血気盛んな人間だって勘違いしないでちょうだいね」 「……あんたの噂は前々から聞いてるよ。現時点で世界にたった三人しか存在しないSSSランクの冒険者の一人、魔物使い(テイマー)ヴィニアス……あんたをクランに勧誘しようとして失敗した連中は数知れずってことも知ってる。あんたがクランに求めてるものって一体何なんだろうな? メンバーのレベルか? 資産か? うちだったら、その両方の条件を叶えてやれるって自信あるんだけどな」 「……お生憎様、アタシはそのどっちにも興味なんてないの。アタシは単に束縛されることが嫌なだけよ」  黒騎士(ダークナイト)からの言葉に、ヴィニアスはひらひらと右手を振って椅子に腰掛けた。  カップのお茶をくいっと一口飲んで、ふっと苦笑を口元に浮かべながら言葉の続きを口にする。 「どうせアナタも、この子やアタシ個人に興味があるわけじゃないんでしょ? この世界には、魔物使い(テイマー)特殊技能(スキル)がないと渡ることができない特殊なエリアが存在する……そこにあるダンジョンを攻略したいがために魔物使い(テイマー)を仲間に引き入れたかった、ってくちなんでしょ。今までにアタシを口説いてきた輩の八割と半分がそういう下心満載の連中だったからねぇ」  因みに残りの一割と半分は、単純にヴィニアスの美貌に魅了されて口説こうとした男だったんだとか。  美人というのは、何かと得だ。それは現実世界でもこの世界でも変わらないらしい。  私も、現在はそれを分かりたくもなかったけれど実感している。  ヴィニアスの指摘に、黒騎士(ダークナイト)は明らかに図星を指されたという顔をして言葉を詰まらせた。  ……そりゃ、未攻略のダンジョンがある、なんてクランとしては名折れだろうしね。彼らにしてみたら。 「ま、全世界のユーザー数から見ても、魔物使い(テイマー)やってる人なんて殆どいないし。更にあのエリアに渡れるほどに高ランク高レベル、なんて、それこそ片手で数えられる程度なんじゃないかしら。無理もないわよね、魔物使い(テイマー)は普通にやってたんじゃまずまともに成長できないジョブだし、大抵の場合は成長する前にデータをリメイクしちゃうみたいだし。ほんと、最近の若い子って堪え性がないわよねぇ」 「…………確かに、件のダンジョン攻略のために魔物使い(テイマー)が欲しい、っていうのは否定しないさ。あそこはまだ誰も足を踏み入れたことがない未踏の領域だ。そこを一番に攻略して制覇したのは俺のクランだって、世界の歴史に名前を残したい。そう望むのは悪いことかよ?」  ヴィニアス相手に普通の勧誘は通用しないと分かったのか、黒騎士(ダークナイト)の言葉から先程まで感じられていた余裕の色が消えた。  目の前にした宝物を手に入れるまで意地でも帰れない、まるでそういう感じの目になっている。  昔からそうだけど、少なからずいるんだよね。名声の獲得にやけに執心している連中。一番じゃないと気が済まないって奴。それって二番以降じゃ駄目なの? 「あんたたちがクランに入りたくないって言うんなら、それでも構わない。どうせダンジョンのモンスターはほぼテイム不可能だしな」  ダンジョン攻略に関しては魔物使い(テイマー)はいても荷物になるだけ。正直な話、欲しいのはあのエリアに渡るための特殊技能(スキル)だけで、戦力として魔物使い(テイマー)が欲しいわけじゃない。  黒騎士(ダークナイト)は私たちに対してきっぱりとそう言い切った。  何よそれ。  私は開いた口が塞がらなかった。  効率至上主義の集団だってことは知ってたから、今のはそこまで予想の斜め上を行くような発言でもなかったけれど……私たちのことを完全に『特殊エリアに渡るための道具』としてしか見ていない彼らの態度には、呆れを通り越して何とも言えない気持ちになった。 「クランに本加入しなくていいから、エリアに渡る時だけ加入してもらって、攻略メンバーをエリアに運んでほしい。運び終えたら脱退してくれていい。もちろん、その分の報酬は支払うぜ。どうだ、協力してくれるか?」 「……はぁ、一応話を聞くだけ聞いてみたけど、これまでの中で一番しょうもない口説き文句だったわね。ここまで心に響かない口説き方をされたのは初めてよ」  カップをことりとテーブルの上に置いて、ヴィニアスは肩を落とすと口元をきゅっと横に結んだ。  今までの友好的な態度からは一変して、冷酷に黒騎士(ダークナイト)たちの方を睨みつけると、低い声で言い放った。 「──二度とアタシたちの目の前に顔を見せないでちょうだい。今日のことを忘れてまた口説きに来ようものなら、容赦しないわよ。覚えておいて」  覚えておく気にもならない低レベルな捨て台詞を残して黒騎士(ダークナイト)が仲間を連れて去って行った後。  最初から何事もなかったかのように、普段ののんびりとした様子でサンドイッチを頬張りながら、ヴィニアスは私に言った。 「ああいう連中には甘い顔を見せちゃダメよ。アナタは魔物使い(テイマー)としては実力があるけれど、冒険者としてはまだまだ経験が浅いから、アタシ心配なの。いつどんな下心丸出しの男共に食い物にされるのかって……気が気じゃないわ。アタシの目の色が黒いうちは、アナタのことはアタシがしっかり悪い虫が付かないように守ってあげるからね」 「うん……ありがとう、ヴィニアス」 「いいのよ。アタシたち、お友達でしょ。困った時はお互い様、遠慮しないで頼ってちょうだいね」  現在の私には、世界屈指の高ランク美女魔物使い(テイマー)という肩書きがある。  今日のように、私のことを知ってクランやパーティ勧誘に訪れた冒険者の数は、もう記憶していられないほどにもなる。  無論、私がこの世界に来てすぐにそうなったわけではない。先もヴィニアスが言っていたように、魔物使い(テイマー)として一人前に成長するには並々ならぬ努力が必要なのだ。その『努力』をしたからこそ今の私が存在するのである。  ……私をそんな風に育て上げてくれたのが、此処にいるヴィニアス・フルール。白銀の災禍姫、の二つ名で知られる、世界最強の魔物使い(テイマー)と名高く、私の唯一無二の親友でもある人物だ。  彼女とは、この世界の中で知り合った。  そこから如何様な出来事があり、現在の私たちになったのか。何の変哲もない、美人ですらなかった平凡な私がどうして美女だなんて言われるようになったのか。  ──良かったら、片時の暇潰しがてら、聞いてほしい。  私が、現在の私になるまでの物語を。

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