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臆病者、神に至らんとす!

読了目安時間:5分

005 ミニマリズムに似た別の何か

***  目が覚めて真っ先に目に入ったのは、本棚とクローゼット。  眠すぎて昨夜は気にしていなかったけれど、小屋・・・じゃなくてこの家は玄関からすぐのダイニングキッチンと、奥の寝室の二部屋があるようだ。  本棚にはたくさんの本が並んでいて、背表紙の半分くらいは読めない。  クローゼットも勝手に開けてみる。・・・見慣れないけれど何処かで見たような服が収められていた。  これ、昨日の "彼" の服に似ているような・・・?  キッチンには何かの肉と野菜がある。  でも僕は料理なんかしたことがないから、どうすればいいのかわからない。 「火球!」  ゴウッ! 「おおうあっ!?」  とりあえず火がないとね、と思って唯一覚えている初級火魔法を唱えてみたら、想像の 100 倍くらいの威力で竈門が燃え上がった。  昨日の風刃のことが頭から抜け落ちていた。  メラメラと燃え始めた薪。  肉を適当に切ってフライパンで焼いてみる。何の肉だろう・・・。 「お・・・。」  匂いは問題なさそうだけど。  焼いただけの肉。テーブルに運んで、ナイフで切る。食べる。 「お・・・! 美味しいじゃん!」  めちゃくちゃ美味しい! こんな美味しい肉、屋敷でも食べたことない!  まぁ何の肉かはわからないんだけど。  ・・・もしかして魔物の肉かなぁ? とか思ったり。  一応腹ごしらえは済んだことにして、これからのことを考える。  僕は家族に捨てられた。  あの屋敷には戻る気になれない。  唯一アーリアのことだけが気掛かりだけど、修道院が保護しているのだから生きていくのに問題はないと思う。 「でもやっぱり、会いたいなぁ・・・。」  たった一人のまともな友達に。  たった一人の、僕の理解者に。  でも無理だ。  きっと屋敷では、僕がいないのが普通、そういう日々がすぐに訪れるだろう。  それにもし戻ってもまた兄たちや・・・それから父さんにも追い出しを喰らうかもしれない。  もうこれ以上、あの屋敷と関わりたくない。  生きていく場所が必要だ。  強くなるための。 「・・・ここがそうなんじゃない?」  お腹が満たされたことで気持ちに余裕ができたせいか、小屋から出て振り返ってみると、みすぼらしいこの建物が妙に心強く思えてきた。  キョロキョロとあたりを見回して、感覚を鋭くしてみる。  ・・・魔物たちはここに近づこうとしない。  多分 "彼" が住んでいた小屋。  仕組みはわからないけれど、魔物が近付かないならここに住めばいいんじゃないか?  一人になって、いっそ前向きな気持ちが起こるのを感じる。  そして勢いそのままに、僕はこの小屋を生活の拠点にひとまず決めた。  まずは何があるか、調べないと・・・。 ***  結論から言うと、ほとんど何もなかった。  最低限の調理器具。  最低限の寝具。  最低限の、僕とは丈の違う衣服。  だからその分、たくさんある本に興味を惹かれた。  背表紙と同じように、半分ほどはやっぱり中身も読めない文字で書かれていたけれど、もう半分は僕にも読める。  紙質的に新しい本はあんまりない。でも古い本も小難しいものばかりじゃなさそう。 『ヒポヌスの冒険 ~カラクサ村の危機~』 『神都にみる宗教学』 『今日から使える! 名言集!』 『魔法の基本、そのまた基本 ~初級魔法大全~』 『これ、食べていいの?』 『不思議なお客と不思議な店主』   屋敷や街中では見かけたことのないような雰囲気のものがたくさんある。  その中の一つを、僕は机に持っていってちょっと読んでみることにした。 『人生を諦めないために』  何々・・・?  ・・・。  なるほど、よくわからない。  今の僕には大切なことだと思ったのに、これは小難しいやつだった。  僕は本を収めて、外に出ることにした。  キッチンに残っている肉が少ないから、調達に行くためだ。  魔法の威力が上がったのは夢じゃなかったみたいだし、倒せそうな魔物を見つけて狩ることにしよう・・・。 ***  ゴーレムが特に強そうだと思ったのは昨日と同様で、でもそれ以上に恐ろしい魔物がいた。    ドラゴンだ。  ドラゴンは各地のダンジョンを象徴する存在だと聞いている。  もしかしたら幻惑の森もダンジョンに似た何かなのかもしれない。ゴーレムもいるし。 「グググ・・・。」  そのドラゴンは僕の感知ギリギリの距離から、既に僕のことに気付いていた。  木々の隙間に掻き消えない存在感、綺麗な瞳。 「あ・・・。」  僕はその瞳に見据えられて、昨日の今日だというのにまた、死んだかな? と思った。  けれどドラゴンは僕になんか興味がないとでも言わんばかりに、視線を逸らして飛び去った。  ・・・あれは絶対にダメだ。  とりあえずは猪みたいな魔物から探して狩ろう。  昨日初めて倒した魔物が、そういう見た目だったから。 「風刃!」 「ピグィイイイイ」  勝手に自分のものにしてしまった剣みたいな武器で風刃を飛ばすと、やっぱり猪みたいな魔物は倒せた。  ・・・でもこんなに大きな魔物を、どうやって持って帰ったらいいんだろう。それに、解体の仕方もわからない。  そもそも普段僕が食べている肉って、どういう部分なんだろう?  仕方がないので僕は足を切り落として、鮮血に吐き気を催しながら皮を風刃で削り飛ばした。  それらしい骨付き肉になった足を持って帰る。 「あれ・・・。」  小屋について、ふと、僕はあんまり疲れていないことに気付く。  魔物の足はずいぶん重そうだし実際重いのに、見た目ほど重いと感じない。 「もしかして・・・。」  僕は威力の増した風刃と火球のことを思い出して、一つの可能性を考えた。 「僕の体も強くなってる・・・?!」  昨日は疲れすぎてそれどころじゃなかったけれど、改めて体を意識して動かしてみる。  殴りつけるように腕を振る。  ・・・ビュン!! 「うあっ!」  ナンダコレ!?  すっごく速い! それにその速い拳をちゃんと目で追えている!  走ってみる・・・!  ・・・ザザザザッ!! 「速い速い!」  やっぱり僕は、魔法だけじゃなくて体も強くなったみたいだ・・・!  魔物には植物系もいるようだったし、木々に果実が成っているのも見つけた。  野菜も食べたいけれど。  ともかく、これなら何とか生きていけそうだ・・・!  僕は採ってきたばかりの魔物肉を切って、焦がしてしまったけれど火を通して夕食にした。  夜は小難しくなさそうな本を一つ選んで、眠たくなるまで読んでからベッドに入った。

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