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臆病者、神に至らんとす!

読了目安時間:5分

023 抑圧の限界と反動

*** 「・・・試合開始!」  先輩とフェムの試合が始まった。  先輩は前の一戦でも見せたように、柔軟に土壁で守りつつ土槍の連撃をメインに攻撃を開始する。  致死級の攻撃が前提として禁じられているため、構成される槍は規模こそ小さいが、制御の緻密さが補って余り有る。 「流石学園の代表だぜ・・・。」  隣でガルビーとドルビーが息を呑む。二人とも土魔法使いだから、思うところがあるんだろう。 「それにしてもあいつ、不気味だな・・・。」  ハルタが言うように、フェムは今回も受け身でスタートしている。  ・・・何のつもりだ?  だらんと構えた剣と水魔法で土槍を薙いではいるが、一歩も動こうとしない。 「イー先輩、なんで近付かないんだ?」  ガルビーが言う。 「多分、さっきの試合で近接戦はまずいと思ってるんだろうな。それか、近距離は苦手か。」  ハルタが答えるが、俺はそうだとは思わない。  なぜなら土魔法は、近接戦の方が強いからだ。俺の持論としては。  おそらく先輩は見極めようとしている。フェムの身体強化の瞬間を。その起こりを。 「なぁ、もういいか?」  ・・・また、フェムが何かを呟いた。  俺は全神経を、感知をフェムに向ける。  何故? 当然、"不測の事態" に備えるため・・・。  次の瞬間、フェムは一気に身体強化を施した。  おそらくあれはさっきの試合と同じ、速力強化。 「アッヒャ!」  一声叫んで風刃のごとく地面を駆けるフェム。  ・・・俺は見極める。フェムの突撃を、フェムの剣を。  ズズパッ!!  ・・・あぁ、だめだ。  そんな言葉が脳裏に浮かぶ。  どうしてだろう、俺はフェムのことも、心のどこかでは善的存在であって欲しかったのかもしれない・・・。  俺は見た。ヤツの剣は先輩の土壁を切った。  ならその次は?  ・・・言うまでもない。さっきの試合の繰り返しだ。 「・・・砂嵐、土壁。」  俺は小声で土と風の複合魔法と土魔法を呟き、会場の視界を奪った。 +++ 「・・・う?」  突然吹き荒れ始めた砂嵐に、イーは目深に被っていたフードを更に深くした。  今にも自分に迫ろうとしていた対戦相手のフェムの姿すら、砂嵐で見えなくなっている。 「クッソガァぁぁぁっぁああ!」  そして聞こえる、砂嵐に掻き消えない慟哭。  考えるまでもなく、フェムのものだろう。 「・・・どこ。」  現状把握を怠ってはならない。基本に忠実に、イーは視界の確保と並行して守りを強化する。  ・・・しかし土壁は、つい先程その外周をフェムによって切り裂かれたばかりだった。 「おぅらあああああぁぁぁ!!!」  闇雲に、力任せに剣を振るいつつ、フェムは確実にイーに迫っていた。  イーとて感じていた。先程の試合で、フェムが異常だということを。生徒会役員内でも参加登録後に心配されていた事が、現実になるかもしれないと。  しかしイーは折れない。"この程度の事" で、イーは躓いてなどいられない。 「・・・サンドクエイク。」  イーの呪文と共に会場の地面が砂と化し、揺れ動く。  修復が面倒という理由で滅多に使わない、土の上級魔法である。サンドクエイクは対象を砂に引き摺り込み自由を奪うのだ。  必殺とも言える魔法を放ち、フェムの気配を探るイー。 「・・・埋まった?」 「埋まるか! クソアマが!」  そして次の瞬間、イーは砂嵐の中振り下ろされる剣を、スローモーションのように感じながら視界に捉えた。 ***  あぁ、なるほど。  やはり。やっぱり。  そして残念ながら。  感知で捉え続けたフェムは、もうどうしようもなくバーサークしていた。  これがフェムの本質? それとも、別の何か?  ・・・どうだっていい。  俺は俺の信念に従って、"悪" を打ち倒す。 《力は常に、悪なる強者を討つために》  心の中で念じ、俺は速力強化を施して席から飛んだ。 「オラァ! ハッヒャァ!」  既に一度白い肌を斬りつけ、殺意を込めた追撃が振り下ろされる。  剛力強化を唱え、刀で剣筋を止める。 「んだクソがぁ?!」  想像と違う結末のせいか、フェムが喚き散らす。 「治癒。」  マントごと脇腹を斬られうずくまる先輩に癒しの魔法を施す。 「お前、やりすぎだろ。」 「はっ! 俺が俺のしたいようにして、何が悪い!?」  ・・・人が言うのを聞くと不快だな。  もしかして俺が言った時も・・・いや深くは考えないでおこう。 「なら、俺が俺のしたいようにしても、お前は文句ないよな?」 「ウヒャ! クソ馬鹿野郎のおかげで、まともに楽しめそうだぜっ!」  何が楽しいのか、明らかに目は "イってる"。  ・・・というかお前、イー先輩で "楽しむ" つもりだったのか? そうなんだな? 「特別だぜ?! 見晒せ! 暗黒憑依!」  闇魔法と身体強化の複合上級魔法を唱え、肥大する体に漆黒を纏っていくフェム。 「お前ごときに・・・人族に何ができる! もうウンザリだ! 俺が、今ここで! 破壊を齎してやる!!!」  ・・・何か言ってるが、どうだっていい。  俺の心の中では怒りが燃え盛っている。  ちょっと話しただけの先輩が危険に晒された、ただそれだけの事でこんなに感情が湧くのは、もしかした異常なのだろうか?  そんなことがちらっと頭をよぎるが・・・。 「お前は一線を超えた。」 「だから何だぁ?! 今から百でも千でも、億でも蹂躙してやらぁ!!!」  フェムの言葉に、集中のため砂嵐を解いた俺は一つの詠唱で返した。 「・・・流砂憑依。」 「チッ、お前が上級魔法を使えるから何だって言うんだ? 格の違いを知れ!」 「見せてみろ。」  フェムの暗黒憑依は剣をも包み、肥大した体に合う大剣になっている。   「・・・私の試合。」  治癒を受けて立ち上がった先輩が俺の隣に立とうとする。だが、俺の感覚が告げている。  残念ながら今の先輩では、フェムに "遊ばれる" だけだ。 「俺のエゴです。許してください。」  ・・・そして俺とフェムは一気に距離を詰め、戦いが始まる。

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