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臆病者、神に至らんとす!

読了目安時間:5分

045 知らないことを知っている

*** 「風防!」 「・・・土壁。」 「水流弾、水流弾! ・・・水流弾!」 「土槍、土槍!」  俺と先輩が前に出て攻撃を受け止める。  ウィルムが水魔法、小さい方が土魔法を連発する。 「水流弾! 水流弾! ははっ!」 「土槍! お前ら、いつまでも突っ立ってるつもりかぁ?!」  水流弾と土槍が弾け飛び、辺りに散らばっていく。 「・・・そろそろいいか。行くぞ!」 「おっしゃ!」 「「"活性"!」」  龍人たちの魔法が止み、代わりにサーベルを構えた彼らの体が活性を浴びてさっきよりも大きく感じられる。 「おい、死んだぞお前ら。」 「はっは! 死んだぞ!」  そして二人の猛攻が始まった。 「先輩も下がって!」  俺は先輩にも引いてもらい、二人のサーベルを刀で一手に受ける。 「はっ! いつまで受けられる?!」  小さい方が吠える。  うるさいな、ちょっと待ってろ。  ウィルムが水刃を、小さい方が土槍を織り交ぜつつ攻撃してくるのを、俺は身体強化と刀捌きでいなしていく。  ・・・何とかなってるのはこれまでの少ない対龍人戦的に想定通りだが、俺は言い知れない不安を感じた。 「・・・案外やるな。」  アーリアの補助魔法と先輩の援護を受けサーベルを躱し続ける俺に、次第に龍人たちの苛立ちが募っていくのが分かる。 「・・・お前、ただの人族じゃないな?」 「知るか。ただの・・・ただの人族だ!」 「なら、ただの人族らしく斃れるがいい・・・。」  そして、ウィルムが俺の知らない魔法を唱えた。 「———"煌輝"!」  ガガッ! と一瞬眩ゆい光がウィルムを包み、そして光が収まると、ウィルムの姿は数瞬前よりも "龍" らしくなっていた。 「・・・何、あれ・・・。」  後ろでアーリアが呟く。 「さすがウィルムさんだ・・・。」  小さい方はできないらしい。 「後進的種族に生まれたことを恨むがいい・・・! 水流弾!」  威圧感を増したウィルムが、見た目そのままの圧で攻撃を再開する。  俺はそれを重ねがけした身体強化で受ける。  ・・・活性だけでなく全ての身体強化魔法をかなりのレベルで重ねて、ギリギリ渡り合えるかどうか。 「んじゃ俺はお嬢さん方を・・・!」 「・・・任せて。」  俺たちの戦いに入り込む余地がないようで、小さい方はアーリアと先輩に向かう。  ・・・今俺は手一杯だ。  先輩、アーリア、耐えてくれ・・・! 「よそ見とはいい度胸だな。」  "煌輝" の魔法で力が底上げされたウィルムがサーベルを振りつつ言う。 「・・・まともに俺に攻撃してから言うんだな。」 「ならば見せてやろう・・・! "水龍"!」  ズズ・・・と泥の中から染み出すように水の龍が現れ、ウィルムに並んだ。 「行け!」  そして水龍がウィルムの指示を合図に、俺を襲う。 「"雷帝"!」  バジジジジジッ!!!  雷を纏った俺の刀と水龍が激突し、辺りに濛々と水蒸気が立ち込める。 「よそ見してんじゃねぇぞ!」  水蒸気を切り裂いてウィルムのサーベルが振り下ろされる。 「お前こそ!」  バチッチチッ!!  俺は襲い来るサーベルを刀で流して、水蒸気に紛れさせた雷槍を打ち込む。 「うがぁ! 痛えなオイ!」  水龍が弾け飛びつつウィルムを守り、雷槍の威力が削がれてしまうが、俺には都合がいい。 「氷獄!」 「な、お前まさか!」  ウィルムが声を上げるが、もう遅い。 「いやしかし、俺を易々と下せると思うなよ?! 氷鎧!」  ビキ、ビキキッ、バキッ———  これまでの攻防や雷装で撒き散らされた水で、ウィルムはすでにびしょ濡れだ。  それを俺の氷獄で固めていく。  対するウィルムは氷鎧で、体にまとわりつく水の制御権を俺に取らせまいとする。  ビキキキッ! バキュキキッ———! 「ふ・・・ふざけるな! 俺が! 負けるだと?! 氷鎧! 氷鎧ィ!!!」  氷獄の制御に神経を集中し、ウィルムの体の一片まで氷で覆っていく・・・。 「ウォア! ウッガアアアア!!!」  ・・・どんなに吠えたって関係ない。そんなことで勝敗は変わらない。  ビキキキキ・・・・、バキン———  そして遂に、俺の氷獄はウィルムを覆い切った。 「ウィルムさん!」  決着を確信し振り返ると、小さい方は先輩とアーリアとまだ対峙していた。 「お前! おま、お前如きが!!!」  小さい方は俺を睨むが・・・そんな余裕があるのか? 「・・・土槍。」  幾重にも展開された先輩の土槍が次々と龍人を襲う。  龍人はぬかるみ過ぎた地面に足を取られ上手く避けられていない。  先輩とアーリアはというと、アーリアの浄化のおかげなのか、攻防を最低限邪魔しない程度に足場が確保されているようだ。  かく言う俺も、浄化を自分に施し続けることで、泥だらけの中奴らの攻撃をしっかり受け止めることができた。 「クソ! クソ! クソ! なんでこんなところで邪魔が入る?! ヤツの裏切りか・・・?!」 「・・・煩い。」 「ヒロ!」  アーリアの声にハッとする。  何を悠長に観戦していたんだ俺は。 「わかった! 土葬!」  俺はドラゴンを封じた魔法を唱え、ドラゴンには遠く及ばない下っ端の龍人は、ものの十数秒で泥団子の中に埋もれることとなった。 「・・・終わったの?」  訪れた静寂に、アーリアが言葉を投げる。 「そうだね。」  俺は結局最後まで動かなかった荷馬車の人族二人を睨みつつ答えた。 ***  本当かどうかわからないが、荷馬車にいた人族の二人は貴族や龍人の "力" の下、仕方なく従っていたらしい。  しかし肝心の、彼らが今回の移動先である王都で何をしようとしていたかまでは知らないのだとか。 「嘘じゃないです、信じてください! ・・・あなたたちだって、例えば王家には逆らえないでしょう?」 「龍人たちから逃げようものなら、俺たちまで奴隷にされるんじゃないかと怖くて・・・。」  なるほどもっともな意見だけれど、俺たちにはその言葉が真実かどうか判断する技術がない。 「・・・ムウ。」  氷鎧の代わりに土葬に埋め直したウィルムと、元から土葬に埋まっていた小さい方を馬車に乗せ、行き先を思案していると先輩が夜空を見上げて呟いた。 「先輩、いずれにしてもこいつらを王家に引き渡す必要があると思います。」 「・・・うん。」  それから、今回の件はミルガルさんの仲間だというヴェリテに伝えた方が良さそうだ。  俺は今のところ、ヴェリテは "善" だと思っているから。 「《真実に近道はない。ただ事実を積み上げよ》・・・気休めですが。」 「・・・?」 「まずはこいつらから始めましょう。」 「・・・。」  ノートに書いた言葉のひとつを引っ張ってみたけれど、場違いだったかもしれない。  けれど先輩は、無言で頷いて王都に視線を向けたのだった。

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