創作に使える(かもしれない)! (エセ)科学のメモ

エーテル(物理)

 エーテル(物理)  このように書くと、物理的に殴ってくる魔法使いの技みたいだなと思いました。 (小並感)  エーテルと聞いて最初に出てくるのは「MP回復しそう」という感想でしょうか?  もしかしたら人によっては酸素原子で2つのアルキル基が結合した物質の方が出てくる方もいるかもしれませんね。  ですが化学の方ならまだしも、真っ先に物理学のエーテルが出てくる方は相当マニアックな方だと思います。私自身、創作のネタ集めの中で初めて知りました。  というのも現在物理学におけるエーテルの存在は、ほとんど否定されていることに起因します。わざわざ否定されている理論を教えるような教員はなかなかいないでしょう。  どのように否定されたのかを説明しようとすると特殊相対性理論というヤバいやつに突っ込まなくてはいけないので、そこは省略させていただきます。 ***  物理学における”エーテル”は「光とはなんぞや」という研究に由来します。  熱はエネルギーであり、様々な物質の間を伝導します。この高いエネルギーを持つ物質から低いエネルギーを持つ物質への伝導の過程を、私達は”熱”として認識します。ですがこの熱も昔は”熱素”という熱を伝える物質によるものとされていました。  また音は波です。波も様々な物質を伝播しながら伝わっていきます。空気などがいい例でしょう。音の発生源が空気を伝わり、私達の鼓膜を揺らしているわけです。このため真空中は音が伝播しません。 (厳密なことを言うと”真空”は仕切った空間の中の気圧が大気圧よりも低い状態のことを指しますし、本当の意味で何も無い空間を作ることは現在の科学では不可能なので、”ほとんど伝播しないため聞こえない”だけではあります)  これらの物理的な現象が解明されていく中で人類は「光とはなんぞや」という疑問にぶち当たりました。そして「光は波である」「だが光は真空中でも通過する」「ということは空間には光を伝播する何かが満ちているに違いない」という考えに至りました。  古来から空間に何らかの物質が満ちているという考えは存在しており、それが物理学の中に組み込まれたのが、光の正体に迫り始めた17世紀頃かららしいです。  そして光を伝播するための物質を”エーテル”と呼ぶようになりました。  ですがこの理論は18世紀になると、ニュートンが「光とは粒子(物質)である」という説を唱えたことによって廃れていきました。  しかしこのニュートンの説も19世紀に入ると、様々な実験によって波と同じような性質を持つことが明らかになりなっていったことで否定され、光の波動説の復権と共にエーテルの存在は再び注目されます。  ところがエーテルは様々な実験によって、光が波と同じような性質を持ちながらも「もしエーテルの中を伝播しているのであれば説明が付かない」という結果が幾つも出されたことで徐々に否定的な意見が出るようになっていき、最終的にはアインシュタインの特殊相対性理論によって否定されるに至ったというわけです。  とは言え(否定の接続詞もこれが最後です)、この特殊相対性理論の基礎を造ったローレンツは「エーテルが存在していることが相対性原理の根本である」と主張しています。  そして両者の意見の違いは時空間における絶対基準の設定の可否によるものであり(もうこの時点で何を言ってるんだという状態です)、つまりは答えの出ない哲学的な問いになってしまうため、ここまで来てもエーテル実在説は完全な否定には至っていないという結論になります。 ***  では今回もこの辺りから創作の話に移りましょう。  おそらくゲームなどで出てくるエーテルは、化学に由来するものではないかと私は考えています。2つのアルキル基が酸素を繋がったエーテル結合の方です。  エーテル結合を含めた炭素原子を骨格とする物質を総称して有機物といいますが、いわゆる薬品はこの有機物がほとんどです。このことから薬のようなアイテムの名前として、なんとなくそれっぽい”エーテル”という名称を誰かが用いたのが始まりなのではないでしょうか。  これがどのような理由でMPを回復するアイテムと認識されるようになったかはわかりません。ですがたしかに私も、エーテルというと何故かMPを回復しそうなイメージがあります。HPを回復しそうなのはポーションですね。  ここでなぜエーテルが魔法の元のようなイメージになったのかは、議論しても仕方がないので止めます。きっと最初に言った人がそう思ったから、という結論になりそうですしね。  このイメージを創作に利用するのは非常に有効だと思います。直感的にわかりやすいことは大事ですし、逆に変に奇をてらって真逆の命名をしてしまえば読者が混乱することもあります。  ですがこの機会に皆さんは物理学のエーテルの存在を知ったわけです。なのでもし良ければいつか命名に迷った際にでもこのことを思い出して、創作のネタに使ってみたりしていただければ嬉しい限りです。

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