ノーマディック・スプライサー

読了目安時間:15分

Case.23 プレイ

 ランプの持ってきた人員輸送用のバスに乗り込み基地へ移動。  遅れて軍の広報部からヘクセンの電撃生放送の情報が流れてきた。  これは軍属でない人間も含めた一般向けのアドだ。  欧州鹵獲班の基地に到着すると、夜中だというのに、パイロット以外のほかの部署の連中も続々と集まり始めていた。  作戦室のモニターには、先行配信されていたヘクセンのプロモーションムービーが延々とリピートされている。  今の時点では顔出しがされているのはヘクセンの地上班と航空班それぞれのリーダーだけだ。  地上班長はアジア系の愛想の良い女性で名前は“ナズナ”というらしい。  身体にピッタリと密着した白のパイロットスーツが油断なく管理されたラインを浮き彫りにし、そこへ黒く輝く長髪を流している。  ジャパン・カルチャーマニアであるカミヤ班長の「推し」で、映像では何故かパイロットスーツ姿で生け花をしていたが、曰く「キモノが見えるようだ」とのことだ。  航空班からはゲルマン系の眉の鋭い実直そうな女性で、名前は“プフィル”。  髪は片側を耳掛け、片側の前髪を視界に掛かるほどに伸ばしたショートヘアでカラーはゴールド。瞳はマリンブルー。  こちらも衣装は同じく白のパイロットスーツだったが、胸のあたりが特別製だということがひと目で分かった。  映像は現場を指揮する姿や、上層部に向かって敬礼をする姿だ。こっちは軍的マジメ路線らしい。  「キツそうな目付きがたまらねえぜ」と班長は推す。  ほかの残りのメンバーは黒いシルエットだけの登場だったが、一様にその輪郭でなんとなくの体型やキャラクターが意図的に分散されているのが分かった。  パーシモンのようにぽっちゃりしてそうなマニアックな体型から、子供のような低身長や、トレーニングで追い込みが掛けられているのが分かる体格など、なるほど色々なニーズに応える感じになっている。  ただ、ひとつだけ不思議なのは、最後の集合シーンでは陸空の班長のあいだにもう一人……十三人目のシルエットがあることだ。  まるで彼女が主役だと言わんばかりにふたりの班長とほかの十人の影が配置されている。  きっとランプの言っていた「目玉」と関係があるのだろう。 「“ステルバー”の姿は今日もナシか」  カミヤ班長は吐き捨てるように言った。 「お飾りの基地長官なんて居ないほうがいいでしょう」  クスティナもあくびをしながらそれに追従する。  普段は緊張感で満たされるはずの作戦室は、バックルの壊れたベルトのようになっていた。  男性陣はプロモーションを観て好き勝手な期待と妄想を述べ、女性陣は原始的なリアクションをする男性陣への苦情に躍起だ。  鹵獲班の基地は若手が多く、まるでスクールのホームルームで教師が到着する前を思い出す。  この乱れは、眠気とアイドル部隊の見学という二重のフィルターも手伝っているのだろうが、一番の原因はふたりの言った「基地長官の不在」だろう。  ステルバー基地長官はその名の通り、この鹵獲班基地の責任者でぼくらの上官だが、特に何をしているというわけではない。  作戦行動は現場判断の塊だし、予算は彼が居なくとも勝手に下りるし、ハンターズの出撃判断や作戦の決定はもっと上のレベルで行われている。  ぼくが知る限りでは、彼のやってのけた仕事は炊飯部に「料理の味付けがしつこい」と苦情を出したことと、整備部の作業場に「散らかっているぞ」とねちっこくケチをつけて、名前も憶えてない適当な隊員を捕まえて、機材の配置を勝手に変更させたことくらいだ。  彼としても大まじめにやっているわけでなく、形だけであり、ちょっとした遊び(プレイ)に過ぎないのだから、引っ掻き回されるぼくたちはいい迷惑だ。 「あいつは上層部や政治家連中とパーティ会場で生放送を見るってさ。あたしとしても居ないほうがヨシ!」  もちろん整備部長のランプにも嫌われている。 「パーティかあ。羨ましいなあ。さっき食べたばかりだけど、お腹が空いてきちゃった」  パーシモンが大きなお腹をさする。ちなみに長官のほうがもっと太っている。 「ヤツが居ないならパーッとやるか。最近は基地内の空気が悪いしな。どうせ予算は掃いて捨てるほどあるんだ、経費を使おうぜ、経費を」 「みんな、班長からお許しがでたよ!」  パーシモンが声を上げると他の面々から歓声が上がった。  実際のところ、この基地の顔はカミヤ班長と言っても過言でない。  長官は軍葬にも出ていたが、実際に遺族への謝罪や慰めを行ったのは彼だった。  戦うのもぼくらだし、基地内の横の連携も各々でしっかりとやっている。  それでも長官は上層部と接着剤でくっついたようになっているので、ぼくらが全滅をしても不祥事を起こしても尻はイスから剥がれないだろうし、基地も主戦場から離れた位置にあるため、戦火そのものが彼を焼き出すこともないだろう。  しいて彼の役割を挙げるとするならば、「誰か一人嫌われ者が居れば、そのほかの人間の結束が固くなる」というところだろうか。  M‐No.7プログラムがありながらも基地内のほぼ全員に「寝ても覚めてもキライ」と烙印を押さしめるのは一種の才能と言ってもいいかもしれない。  基地全体のリーダーのように振る舞わなければならないカミヤ班長は彼のことだけでなく、軍の上層部全体を嫌っていて、何か悪いことがあるたびに彼らへの疑いや不満を呪文のように唱えるのだ。  そのぶん、部下や仲間に対する情が厚く、多くのことを背負い込む気質があった。  今になって気が付いたが、レストランでフライやスタンリーを真似るように悪態をついていたのは、彼なりの儀式(スピリチュアル)だったのだろう。  ぼくは、パーシモンと料理の外注を計画するカミヤ班長のジャケットに覆い隠された腕を盗み見る。  ――……。  ある時、規定外の自主トレーニングで班長と鉢合わせたことがあった。  彼は余暇を女遊びに費やすため、滅多にないことだったが、その日は死亡枠(カースドシート)の三度目の呪いが発動した日の翌日で、特に理由も問わなかったし、挨拶も控えた。  無言でトレーニングを終えて、シャワールームで汗を流していると、彼が入ってきた。  ぼくが先に出ようとすると呼び止められ、前日に死んだ班員の話を振られた。  「アルツ、おまえはあいつのことを忘れるか?」と。  ぼくはどうもM‐No.7の動作に疑いがあったため、「忘れられないかもしれません」と答えた。  班長は「俺は、忘れてしまうんだ」と言った。 「いのちを預け合う仲だったはずなのに、すぐにどうでもよくなっちまう。ヤツのどこでムカついたかとか、どういうヘマをやったかなんてのは、一晩経つだけで忘れちまう。部下を失ったばかりのはずなのに、もう次のメンバーの選考書類のプロフィールを見て笑うことができちまうんだ」 「それが正常ですよ。悲しみに囚われてもメリットはありませんから」 「俺たちは兵士だ。いのちを賭けて非戦闘員のくらしを守ってる。  創造的職業と違って遺せるものはそれだけだ。  比べて決して劣ることはねえが、形にならないうえに死ねば誰も彼もが忘れてちまうんだ。そんなのってアリか?  だから、せめて戦友だった俺が憶えていてやりたいんだ。だが、頭のこれが許しちゃくれねえ」  彼は自身の後頭部を手刀で叩いた。 「忘れたくねえんだよ。まえの部隊にいた時もたくさん仲間に死なれた。  同期も逝った。俺より腕の良い先輩も逝った。  いっしょに飯を食ったり、女を引っ掛けたり取り合ったりした仲のヤツも居たのに、誰を思い出してもなんの感慨も湧かねえんだ」  そう言って彼は右の前腕の外側を見せてきた。傷痕の多い腕だった。  直接敵地に足を着けて武器を向け合う地上作戦班ならともかく、航空系の所属にしては珍しい。 「ひとつ、新しい傷がありますね。ケガしたんですか?」  前腕の甲外側に、彼の特技のレーザーのような赤い一筋のスラッシュ。 「自分でつけた」  その時の班長の自嘲的な顔は今でも憶えている。  それでもあの瞳は、反抗期の子供のような、会話をしているぼくだけでなく、その向こう……世界全部に対して何かを問いかけるようだった。 「口を利いたことがあるヤツが死ぬたびにやってる。心の不快感は一晩寝ると消えちまうが、傷の痛みはそうはいかねえ。  これが消えねえうちは、死んでいったヤツらも少しは延命ができるかと思ってな。  だが、そんなことはなかった。それでも、俺はまた自分の腕にナイフを突き立てちまうんだ」  エビングハウス回路も忘却プログラムM‐No.7も完璧ではなかった。  入軍して長い者は負の感情を処理する回数が多過ぎて、徐々に記憶のスクラップが溜まっていく。 「これは俺なりの儀式なんだよ」 「儀式……」 「なんつったかな。ジャパニーズ・カルチャーではなんにでも神様が居てな。どんな種類の願いごとでも聞いてくれるんだそうだ」 「なんにでもですか?」 「そうだ。道端の石ころにも、商売繁盛や五穀豊穣のような概念にでも。  だから俺は戦場にも生き延びさせてくれる女神が居るんじゃねえかと思ってる。  そいつは酷く美人で優しい女だが、綺麗な顔をしておきながら俺たちに血を要求するんだ」 「いけにえ、でしたっけ」 「そんなところだろうな。アルツ、おまえは不死鳥だなんて呼ばれているが、不死鳥は一度死ぬからこそ不死鳥だ。戦場の女神に愛されてるように思えるが……。神でも女は女だ。油断するなよ」  そう言って彼は笑った。  ――……。 「なあ、クスティナ。接客用の美人アンドロイドや人間のねーちゃんを呼んだら、さすがに上の連中に怒られるかな?」 「その前に女性陣からブーイングですよ」  まあ、普段の彼はこんな調子だが。  さて、注文した料理が届いたタイミングで、プロモーションが延々と流されていたモニターが切り替わった。  パンサーを抱いた状態で格納庫に待機するアニマの映像が映し出される。  勇ましげなバック・ミュージックとともに、アジア地方総司令官(多分だが)の声が作戦内容の解説を始めた。  東南アジアの放棄されたある島の一角にアンチ・ドラマツルギーの活動拠点が発見された。  そこではオールド・ウエポンの研究や試験が行われているらしく、中規模のセンター地区を一撃で壊滅できるほどの大量破壊兵器の存在も確認したため、先手を打ってこれを壊滅する。  魔女たち(ヘクセン)は白鳥型の新型機“アニマ”を用いてネコ科型の新型機“パンサー”をステルス運搬。航空部隊が迎撃に現れるであろうFFFF156(フォーエフ)の相手をし、地上部隊が拠点の破壊を行う。  なお、拠点の規模は小さく、本来なら十二機六組の全てでなく、ニ、三組の出撃でお釣りが来る程度のものらしい。  放送中の事故防止と初陣を華々しい勝利で飾るための采配だろう。  ライブ中継ということで、作戦ポイントまでの移動もカットとはいかない。  その退屈な時間はメンバーの紹介とインタビューに費やされた。  あらかじめ撮影して編集したらしい彼女たちの訓練で汗を流す姿や、オフの日にカメラに向かって手を振る姿を収めた映像が流れ、合間に本人へのプライベートな内容のインタビューが行われた。  それぞれに大仰なコードネームが与えられており、兵士としても一流であることがシミュレーターでの活躍映像と共に語られる。  戦争ということを忘れさせるような構成。  新しいゲームや映画の宣伝を見るようだった。  最年少というメンバーが軍服姿で流行りの歌まで披露している。  料理を食べながら見学する仲間たちは狂騒といっていいほどに盛り上がりを見せていた。  上層部肝入りのプロジェクトとのことだが……アニメファンであるぼくにも難があるように思えた。  確かに宣伝としての構成はしっかりとしていたが、生放送なのは事実らしく、同じパイロットから見ればコクピットでインタビューを受ける彼女たちの緊張は明らかだった。  一人目の紹介映像では鼻の下を伸ばしていたカミヤ班長も、インタビューに切り替わった瞬間、上官の顔に戻っていた。  ぼくもまた、スタンリーを始め死亡枠(カースドシート)に座ってきた若手たちのことを思い出していた。  ある一人は涙目と震え声まで見せてしまっており、これでは魔女たち(ヘクセン)ではなく少女たち(メドヘン)だ。  じっさい、年齢も異例のモラトリアム期である十六歳からニ十歳の範囲から選出されている。  ようやくパイロット勢以外も不安を感じ始めたらしく、それに相応した心配も交わされ始めた。 「プフィル、ナズナ、キャロッテ、ナランハ、マロン、ティーン、シルエラ、ククミス、マリーナ、タンゴ、ミント、フージャオ……」  十二人ぶんひと通りの紹介が終わると、カミヤ班長は彼女たちの名前を唱えた。  名前は陸空の班長以外は紹介時に一度表示され、インタビューで呼ばれたくらいだ。 「おい、班長機の上に誰か立ってるぞ」  誰かが言った。ありえない話だ。  だが確かに、音速で移動しているはずの航空機の上には人間の姿が映っていた。  そして映像がアップになり……。    ……大きな白いマントで全身を覆い、マスクもメットも無しに髪を暴れさせている若い女性が現れる。  続いて、「彼女」のプロモーションが流れ始めた。  彼女の名前は“エンテ”。設定年齢(・・・・)は二十一歳。身長は一メートル六十五センチ、体重はシークレット。  ローズアッシュカラーのボブヘアー、粉雪で覆ったかのように白い肌。  マネキンを連想させる無表情。彼女はアンドロイドであり、兵器なのだという。  情報処理に特化したAIを持ち、かつ、対人交友特化のアンドロイドを凌駕するコミュニケーション能力を持ち、それらをもって命令への服従と自己判断を使い分けて、魔女たち(ヘクセン)と連携を取って任務を遂行する。  これまで紹介されてきたヘクセンは前座であり、彼女こそが真のお姫様(ヒロイン)なのだという。  十二人の魔女とお姫様。古いおとぎ話を想起させる遊びの過ぎた設定に思えた。  彼女を紹介する日常シーンでは、彼女が怒ったり笑ったりしている様子が映されていたが、どこかウソくさく、アンドロイドだと言われたら納得できる演技だった。  いっぽうで戦場でのシーンではポーカー・フェイスに徹していた。  無慈悲にアンチ・ドラマツルギーの構成員らしき敵兵を徒手空拳や一般兵装で倒す姿が披露されたが、衣装は軍服やパイロットスーツではなく、白のゆったりとしたワンピースドレス姿だった。  彼女が殺すたびにドレスが血に染まり、まるで赤い一輪のバラのようになってゆく。  確かにそのシーンでは人間が殺されていたが、編集によってそれが素晴らしいことのように魅せられていた。  映画やアニメの世界だ。  頬についた返り血を拭う彼女は、やはり無表情であったが、ぼくは一瞬……何か……を見た気がした。  唐突に後頭部が痛みを発し、ぼくは呻いてしまう。  誰もそれに気付かない。みんな映像に夢中だ。  先程の不安を捨て去って美人アンドロイドに歓声を送る者や、戦場に駆り出された若いつぼみたちが可哀想だと非難をする者があった。  後者のほうがやや劣勢で……本気で怒ったり心配をするものは明日の朝にはもうゼロだろう。  画面が切り替わる。  バック・ミュージックが急にしっとりとした調子のものに変わり、月下で瓦礫の上に立つアンドロイドの女が映し出された。  エンテは扇情的に両腕を持ち上げた。  月に向かって伸ばされたその手の指先が絡み結ばれ、原始的(プリミティブ)な祈りのようなポーズをとる。  それをゆっくりと下ろし、顔から胸を撫でて自身掻き抱いたかと思うと……なんと衣装を脱ぎ去ってしまった。  人間らしく設計されたそれは見事で、性的(セクシャル)というよりは芸術的(アーティスティック)であり、観賞していた者が男女問わず感嘆を漏らした。  惜しげもなく明かされた肢体は月光に照らされおぼろとなり、まるで白い闇に溶けるようになり……。  気付けば立ち上がり、モニターに向かって手を伸ばしていた。 「おいアルツ、何やってんだ? まさか惚れちまったか?」  班長が笑う。 「アルツくんはロボットフェチだったよね? あたしも彼女にはグッと来たけど……ここまでリアルでもイイんだっけ?」  ランプもからかうように言った。クスティナとパーシモンはルネの名を出してブーイングだ。 「あの子、見たことがある」 「あるわけないだろう。ランプにもシークレットだった子だろ?」 「違うんですよ、夢の中で見た子です」  間違いない。このプロモーションを見て分かった。  だけど、原始的映画のフィルムはいまだバラバラで、つぎはぎの接着テープが引っ掛かり、射影機は何も映し出さないままだ。 「これが夢で見た女? おまえが見たのは予知夢だったってことか?」 「違う、そうじゃない……」  ぼくは痛みの酷くなる頭を抱えて腰を落ち着けた。  自分でも何を言っているか分からなかった。  新しく開発された兵器と会ったことがあるなんて。 「アルツくんの言うのがなんの話か分からないけど、なるほど目玉ってのはこういうことだったかあ」  ランプの悔しそうな声。 「それにしたって、こんな美人にエンテ(あひる)って名前は無くねえか? ヘクセンだからドイツ語だよな?」 「醜いアヒルの子ってことかもしれませんよ」 「それだとナズナちゃんやプフィルちゃんがマジもんのアヒルになっちまうだろーが」  班長とクスティナも少し声が弾んでいた。 「ウソ、身体まで脱いで骨だけになっちゃった!」  続いてパーシモンが驚嘆する大声。  ぼくは顔を上げ、映像を凝視した。  エンテは美麗で無表情な頭部はそのままに、首から下がミッドナイトカラーのボーンになっていた。  また後頭部が痛んだ。  続いて、肉を脱ぎ捨てた彼女が単体飛行をし、フォーエフなどの戦闘機を相手取って戦う映像が現れた。  武装は指先に高出力レーザー、手のひらや口から噴射される凍結装置、それから敵機の同士討ちからして遠隔の支配(クラック)だ。 「現行機を圧縮したみたいな子だなあ。あーあ、どこにこんな技術が眠っていたんだろう? 人間サイズにこんなテンコモリ……。あたし、この子と一晩中楽しみたいなあ!」  メカニックが何か言った。彼女も中腰になり、腰からスパナを取り出して鼻息荒くエア整備に興じ始めた。  空を駆ける“小さなバラ(アイネ・クライネ・ローゼ)”と言ったところか。  爆発をバックにアップになるその姿は冷たい鉄仮面を被ったキリング・マシーンだ。  だが、ぼくにはその仮面の下がなんとなくイメージできる気がした。  映像がアニマの上に立つ今の彼女へと戻される。  アジア地方総司令官の声が他のメンバーと同じように彼女にプライベートな質問を投げかけた。  プログラムで動くアンドロイドに対して好きな食事を聞くなんてナンセンスだ。  それでも、ぼくはその質問の答えに関心があった。  彼女はカメラを見て少し困ったような表情になり、しばらく沈黙して、何か言おうとしたようだったが、ふいに視線を鋭くし前方に顔を向けて何かを睨視した。  続いて、航空班班長プフィルの「ポイントに到達。敵影発見」のメッセージが聞こえた。 「あっ、そうか……」  これはライブだ。ぼくはアニメが良いところで次回配信まで持ち越しになるのと同じ感覚を憶えた。 「アルツ、その辺にしとけよ。小ガモたちがちゃんと巣に帰れるかどうか見届けてやらなくちゃな」 「はい、分かってます。彼女たちが上手くやれるように祈りましょう」 「いよいよプレイ開始だ。頼むぜ、俺はおまえたちのファンになっちまったんだからよ」  そう言ってカミヤ班長は両手を握り合わせた。 ***

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