思出怪談

願掛

こんな話を聞いた。 ある女の子が飼っていた犬が交通事故に遭って死んでしまった。 女の子は悲しんで毎日泣いて過ごしていたが、あるとき学校で流行っている噂話のことを思い出した。 さっそくその女の子は噂話をしていた友達のところへ行って詳しい話を聞いてみることにしたそうである。 「願いが叶う樹のことを教えて欲しいんだけど」 その子の話はこうだった。 学校の裏にある雑木林のどこかに根元が窪んで穴のようになっている樹がある。 その樹を見つけ出して願い事を唱えるとそれが叶うのだという。 「でもね、願い事はタダでは叶わないのよ。代償が必要なの」 「代償?」 「願いを叶えてもらう代わりになにかを差し出すってこと」 「なんでもいいの?」 「元々いらないようなものじゃダメよ。今、自分が大切にしているものじゃなきゃね」 その女の子にとって大事なものといえば死んでしまった犬のペスであったが、その代わりに差し出せるものなんて思いつかない。しかしどうしても諦められなかった女の子はとにかくその雑木林に行ってみることにした。 雑木林にはたくさんの樹が生えている。 しばらく歩き回ってみたがとても目当ての樹を見つけ出せそうにない。 やっぱり無理なのかなあと思っていると雑木林の奥に方からなにか声のようなものが聞こえたような気がした。 女の子が声のした方に行ってみると、そこには根元が窪んで穴のようになった樹が生えている。 これだわ! そう思った女の子はすぐに願い事を唱えた。 「ペスを生き返らせてください。その代わり……」 だがやはり差し出すものが思いつかない。 女の子が困っていると後ろから声がかけられた。 「こら! ここには入っちゃいかん!」 それは学校の先生だった。そういえば最近雑木林に入り込む生徒が多いので先生が見廻りをしていると言っていた気がする。 驚いた女の子はそのまま逃げるように家に帰ってしまったそうである。 それから数日後、女の子は行方不明になった。 女の子の友達はもしかしたら女の子があの雑木林に行ったこととなにか関係があるのかもしれないと思って様子を見に行ったそうだ。 すると雑木林の入り口に一匹の犬がいるのが見えた。 女の子から話を聞いていたその友達は本当にペスが生き返ったのかと近づいてみるとなんと犬の顔にいなくなった女の子の顔がついている。 その犬は悲しそうに一度だけ鳴くとすぐに走り去ってしまったそうだ。 女の子の願い事が中途半端だったために犬の体と自分の体を交換してしまったというのであろうか。

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