聖欲闘技とは!!!
鍛えた力! 磨いた技! そして偽りなき聖欲の強さ!!
全てを兼ね備えた者だけが女神の御前で勝者の栄誉を勝ち獲ることのできる、世界で最も熱く激しい、セイント&バイオレンスな神事である!!!
ここは天衣無縫の女神、アズモノウヅメを奉じる天の浮島、サンタアメノニア。
雲海を泳ぐように遥かな空を行くこの島は、アズモノウヅメの神通力によって絶えることなく世界の空を渡り往き、世界各地の人々に女神の恩寵を賜っている。
その島に住まうのは、世界四大陸五諸島の各地から訪れた女神の敬虔なる信徒たち。この浮島全体が街にして聖域であり、女神を奉じる世界最大の神殿にして総本山。
島の中央には、島の何処からでも見える程に高く大きな、世界最大のコロシアムが設けられている――もちろん、コロシアムという表現は、飽くまで比喩で――それは神事のための巨大な礼拝堂なのである。
高さはおよそ50m。円形を成しており、その直径はおよそ250mにも及ぶ。
日差しの明るさを程よく透かすが熱は通さない、純エーテル加工された特殊な天幕に覆われたその内部構造はシンプルだ。
まずは外側から、内に向けてすり鉢状に設置されている参列者の為の観覧席。4階構造になっており、何処からでも礼拝堂の中央に視線が集中するように作られている。
参列者席は最も中央に近い、一番低い所でも、地上からの高さは3mほどはある。
中央部分、直径80m程の範囲には、基本的に外部の参列者は立ち入ることはない。良く整備されたグラウンドの様なその中心には、祭壇と呼ばれるほぼ円状と言って良い――正確には正二十角形の――リング、などと言われるものに酷似した高さ1.5mほどのマットがあり、各頂点に立てられたポストの間を3本ロープで囲っている。
この建物がコロシアムという表現で呼ばれる理由も、お分かりだろう。
要するに、中央にリングの置かれた正円状の闘技場、と呼ばれるものを想像していただければそれでおおよそ間違いではない。
リング上――もとい、祭壇上の光景を大写しにするための大型モニターも、場内三箇所に設置されている程度にはコロシアムしているのだ。
だが、ここは礼拝堂である。
即ち、今この場で執り行われていることは神事であり、人々はそれを【ミサ】と呼ぶのだ。
『さぁぁぁぁぁぁぁァ!! 盛ぉり上がっております! ここサンタアメノニア礼拝堂! ミサの殿堂、聖欲闘技の総本山は本日も! 6万4000人の参列者が! メーンエベントの開始を今か今かと待ち侘びております!』
『私もね、今日のミサはね、特にこのメーンをね、とても楽しみにしてましたの』
『そぉーですか!
そうでしょう! なんと言っても今日のこの一戦は――』
祭壇脇の放送席でマイクに向けて熱く唾を飛ばすリリリリス=リリリリン枢機卿の言葉を遮るように、大音量の音楽が会場内に鳴り響き(北方大陸のメジャーバンド・BBスクイードの『ALPHA-WOLF』だ)天幕の陽光透過率が素早く調整され、暗くなった場内にスポットライトが当てられる。
列席する女たちの口々から一斉に発せられる黄色い歓声。
立ち昇る爆炎魔法の煙の中を悠々と歩き、中央の祭壇へと向かう女が一人。
長く艷やかなその黒髪は爆炎の光を受けてもなお乱れることなく、柔らかな風に吹かれるかのようにしなやかに揺れながらその輝きを怪しく映す。顔の横からピンと凛々しく突き立つのは一対の獣耳。
わずかに紅の塗られた薄い唇を僅かに笑みの形に曲げて、祭壇中央を見つめる眼差しは冷ややかなれど何処か色めいている。
細く引き締まった白磁の体に艶めかしい曲線の美を加える豊かな双丘。
歩く度にぐっ、ぐっと人の視線を集めるその腰つきに目を向ければ、ふぁさり、ふぁさりと揺れる黒毛に覆われた太い尾が目に入るだろう。
ワーウルフ――彼女はそう呼ばれる種族だ。ライカンスロープと呼ばれるいわゆる狼男とは異なり、満月の夜に狼そのものの姿に転じるようなことはない。しかしその耳、そして尾。内に秘めたる牙と爪――何より、熱き闘争心はその身に獣の血脈を継いでいることを如実に物語っている。
その身体を覆っているのは、黒い革のベルト、のみ。
腰に巻いているだけ、というのでは勿論無い。胸の先端を覆うようにぐるり、腰回りや太腿、そして鼠径部も覆うようにぐるりぐるりと幾本のもの革ベルトを体中に巻きつけて衣類の代わりとしている。
徐々に明るさを増していく場内、そのワーウルフの美女は予備動作もなくしなやかに飛び上がると、後方空中一回転を交えて、一本だけ青く染まったポストの上に音もなく降り立った。いつもながらの素晴らしいパフォーマンスに参列者たちの中から一際大きな歓声が巻き起こる。
『
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