誰もいなくなったSNSグループに、コメントを送ったら亡くなった婆ちゃんから返信が来たお話です

自分以外の全員が抜けて誰もいなくなったSNSグループにメッセージを送ったら、返信が来た話

『もうこのSNSグループ使わないから、抜けるわ』 『ミーティングお疲れ様』  俺も『お疲れ様でした』と返信を打ち、次々と会社仲間がグループを抜けていく様子を眺める。  さっさと俺も抜ければいいのだが、なんとなく抜けるのも面倒に思えた。  それにちょっとしたいたずら心も生まれた。  ミーティング用に作ったグループには、俺の大嫌いな上司がいた。  いつも俺は上司に気を使ってばかり。  そんな俺にも腹が立つし、横柄な態度の上司にも腹が立つ。  誰もいなくなったグループを確認し『上司のバカヤロー死ね』と打った。  あぁ、すっきりする。  面と向かって言えたらどんなに良いだろうと思いながら、スマホを机の上に置いた瞬間。  ぴろん、と返信音が鳴った。  ぞくりとした。まさか、俺のチャットを見られた?  冷や汗をかきながら、スマホを手に取って内容を確認する。  宛名は『よしえ』だった。  よしえ?  このグループに女性は居ない。  疑問に思って『よしえ』のチャットを目で追う。 『あんたね、ひとさまにむかってしねはいっちゃだめだろう』  全部平仮名だ。よしえからのアイコンを見ると、真っ青な空の写真が見える。  誰だこいつは。  お前は誰だ、と打ってみる。  すぐに返信が来た。 『こうのよしえ。あんたのばあちゃんだよ、あたしがしんでさんかげつしかたってたないのに、もうわすれたのかい』  「ば、婆ちゃん?」  俺はぎょっとした。  今から三ヶ月前に、婆ちゃんは心臓発作を起こして亡くなってしまった。  大好きな婆ちゃんがこの世から去って、俺は全身の水分が枯渇するのではないか、と思えるほど泣いたのを覚えている。  忘れてないよ、でも本当に婆ちゃんなの、と返信すると、しばらく経ってからぴろん、と音が鳴った。 『おまえにかってあげた、あおいきょうりゅうのおもちゃ。なっとうにからしをいれるのがだいすきなおまえがよろこぶだろうとおもって、まちがえてからしじゃなくてわさびをいれて、おまえをなかせたこと』  みるみると婆ちゃんと俺の思い出が蘇ってくる。どうしても欲しくてねだった、青い恐竜の玩具。婆ちゃんが納豆にカラシではなく、ワサビを入れられて、それを食べた俺が大泣きした事件。  婆ちゃんだ。  俺の目から涙がぽたり、ぽたりと零れた。  「婆ちゃん。会いたいよ」  その気持ちを文字に打つと、返信が来る。 『あんたがちゃんとちじょうでいのちをまっとうしたら、あおうよ。あたしはてんごくでまってるからさ。がんばれよ、こうき』  「婆ちゃん、そんな、俺もっと話したい!」  しかしどれほど待っても、返事は来なかった。  俺はぼろぼろと泣いて、スマホの画面に涙を落とした。婆ちゃんのメッセージを何度も繰り返して読み、呼吸を落ち着かせる。  「婆ちゃん、俺、頑張るよ」  たとえどんなに嫌な上司の元で働こうとも。  いつか婆ちゃんに会った時に、胸を張って生きたと、正々堂々と言えるように。

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