雨の日にじみーな男の子が、ギャルな幼なじみに告白する甘々物語です

雨の日の告白を、君に

 重たい雨が降っていた。  傘を差していても、アスファルトの道路に跳ね返る水が、僕のズボンや靴を、びしょびしょに濡らしていく。 「あぁ、もう、すごい雨。巻いた髪が元に戻っちゃう」  ピンク色の傘を差す晴香は、濃い赤い色のリップを塗った厚い唇を尖らせた。片手で、綺麗に巻かれた長い髪を触り、毛先を見つめる。 「あっ、やだぁ。枝毛出来てる」 「髪の毛、金色に染めてるからじゃない?」 「そんなの関係ないと思うんだけど」  晴香は、僕の幼なじみで、ギャルだった。  マスカラをべったりと塗った長いまつげ。瞳の中に明らかに異物が入ってると分かるような、グレーのカラコン。引っ掻かれたら痛そうなピンクのネイルに、丈の短いスカート。  おまけにスタイルも良いから、晴香は大輪の花のような存在感があった。  一方、僕は地味で、平凡な顔立ちや身長をしていた。まるでそこら辺に生えている雑草のようだ。 「ねぇ、翔。あんたも染めてみればいいのよ、髪の毛。染めるなら、何色が良い?」 「黒で良いよ、僕は」 「ふぅん、つまんないの」  晴香は僕との会話の中で、つまんないの、という言葉をよく言うようになった。 「つまらなくて、ごめんね」 「別に謝って欲しくて言ったわけじゃ無いんだけど」  つまんないの、と言う割には、晴香は毎日僕と一緒に登下校をする。まるで日課のように。 「あのさ」  どうして一緒に僕と、家まで帰ってくれるの、と聞こうとして、やめた。聞いてどうするんだ。  尋ねようとしてやめた僕を、晴香は怪訝そうな表情で見つめてきた。 「何? 途中で言いかけてやめないでよ」 「あぁ、えっと。晴香って彼氏は作らないの?」  しまった。馬鹿な質問をしてしまった。 「彼氏? 作りたいに決まってるじゃん。あたし、年齢イコール彼氏ナシなんだから」 「じゃあ、好きな人とかいるの?」  また馬鹿な質問をしてしまった。自分に馬鹿さに頭を抱えたくなった。  僕は小学生の頃に、晴香が好きだと自覚した。それは高校二年生になった今でも変わらない。  もし今、晴香の口から好きな人がいると言われたら、晴香に好きだと想いを伝えられない弱い心が、ぱんっと破裂してしまうかもしれない。 「さーね、教えてあげないもん」 「えっ」  もしかして、いるのだろうか。好きな人が。 「はぁ。あのさ、逆にあんたはどうなの? 好きな人はいるの?」 「え、あ、ぼ、僕は」  顔が熱くなっていく。ここで、君が好きですって言えたら、最高だ。言え、言うんだ、僕。  晴香は、じっとりとした目で僕を見た。 「ふーん。いるんだ、好きな人」 「え、あ、えっと」 「誰? あたしが見定めに行ってあげるから」 「見定めるってなに」 「ば、なんでもないわよ、馬鹿!」  顔を真っ赤にさせた晴香は、つん、とそっぽを向いてしまった。 「好きな人、出来たらちゃんと言いなさいよね。言わないと、許さないんだから」  傘に隠れた晴香を見て、僕は小声で言った。  今はどしゃ降りの雨が降っている。これくらいの声なら聞こえないだろう。 「僕は、晴香が好きだよ」  晴香が立ち止まった。  もしや、聞こえてしまったのだろうか。ひやりとした。そろそろと、晴香の顔を覗く。  顔を真っ赤にさせた晴香と、目が合った。 「うわ、なに見てんの、馬鹿っ!」  晴香は思い切り後退りをした。 「ご、ごめん! あの、晴香、顔が赤いよ」 「誰のせいだと思ってんのよ、馬鹿っ!」  僕の雨の中の告白が、聞こえたようだった。 僕の頬が熱くなる。 「あたしを見ないでよ、ばーか、馬鹿!」  僕はついつい、意地悪をしたくなって笑った。 「好きだよ、晴香」 「あ、あたしは、別に」  晴香は唇を震わせた。ぎろっと涙目になっている晴香が、大きな声で叫んだ。 「あたしは別に、好きなんだから――!」  そう言って彼女は走って行った。  取り残された僕は、ぽかん、としていた。 「日本語おかしいよ、晴香」  酷い雨が降っていて良かった。もし晴れていたら、僕の体温は上がりに上がって、きっと沸騰してしまう。 「ふふっ、ねぇ待って晴香!」  僕から逃げる晴香を追いかける。地面の水たまりが跳ね返って、靴の中にじんわりと水が染みて来るけれど、関係ない。  明日から、きちんと好きだって伝えよう。  僕は、そう心に決めた。

2020年 7月辺りに別サイトで投稿したお話

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