Chapter:85 「あなたの思いがある限り」

 マートルンの旅は長い。  スヤスヤガーガーといい寝息をたてていた五月と博希も、眠りはじめてから四回目の検札のときに目を覚ましてしまった。 「よく寝た」 「今、どこ?」  窓の外の景色だけをただ見つめて、結局のところ完全には眠らなかった景が、五月の口はしに認めたよだれのあとをハンカチで拭いてやりながら、苦笑した。 「今、ちょうど、パープルウォーのふたつめの駅を通過したところですよ。じきオレンジファイに着くでしょう」  博希はさすがに自分でよだれのあとをゴシゴシとこする。それから、彼も窓の外に流れる景色を見つめた。 「……パープルウォーか……」  その胸に何が去来しているか、それは博希本人にしか解らない。が、景にはなんとなく推して知れるような気がしていた。もっともそんなことを博希に言ったところで、また照れ隠しに子供化したときのことを突っつかれるに違いないので、景はあえて何も言わなかった。その代わりに、彼はふたりにさっき車掌から聞いたこと、この先の旅のことなどを話した。 「……というわけでしてね。すぐさま、ピンクフーラ入り、というわけにはいかないかもしれません」 「でもさ。どうせなら乗り換えにも乗ってみてえと、俺は思うんだよね」  ぼくもそうだよと五月がうなずく。それに――と、言葉がつながれる。 「気むずかしいひと、なら、カーくんのパパもそうなんじゃない?」  五月は言ってから、あっと口を押さえた。言っちゃいけないこと言った。そんなつぶやきが聞こえるような気がする前に、博希が軽く五月の頭をはたく。 「景の父ちゃんとその運転手のおっちゃんはちょっと違うだろうよ」  ――な。博希が声に出さずに言う。まあ、そうでしょうけど、と景も思うが、表立っての反論の言葉も同意の言葉も見つからない。それに気難しいというただ一点においては、一緒といえば一緒だ、きっと。 「ま、終点に着いて、そこから乗り換えの切符を買って、運転手の方に会ってみなければ解らないことではあるんですけれどね」  いうまでもなくそれが結論である。  マートルンは終点を目指して、順調にすべっていた。  『終点でございます。ご乗車ありがとうございました』  そんな放送が流れて、マートルンはオレンジファイの終点駅に到着する。ほのかに暖かいその気温は、先程まで炎のかけらが降っていたことを感じさせた。 「お疲れ様でした。こちらで最後の切符と紐を回収いたします」  改札の場所に立っていた駅員に紐を渡す。景がついでに、と思って話し出す前に、博希が駅員に聞いた。 「でさあ、乗り換えの電車はどっから乗るんだ?」 「は?」 「あー……博希サン、電車でなくてマートルンですよ」 「あ、そうそう、それ。違う駅から出るんだろ?」  博希の目はもう九割が興味の塊だった。恐らく一割は使命感だろう。乗り換えの電車に乗りたい、難のあるという運転手に会いたい、というかともかく早いところピンクフーラに行きたい――素人にもはたから見て解るほど、身体の奥から湧き上がるワクワクを抑えきれないといったふうで、博希は駅員に食らいついていた。 「あ、ああ……はい。向かいに、お乗り換え用の駅がございます。切符もそちらでお買い求めください」 「おーう。サンキューなあ、おっちゃん!」  聞くや否や向かいの駅へ駆け出していった博希を追いかけるべく、景と五月も急いで走り出す。もちろん、このふたりは駅員に「ありがとうございました」と丁寧に頭を下げるのを忘れなかった。あとに残されたのは、唖然とする駅員たち。 「……なんだ、あれ」 「さあなあ。それにしたって旅人なんか最近珍しいよ。……乗り換えるって言ってた?」 「言ってたな。ちょうどそろそろヤーマさん来るよ、言っとくか。喜ぶぞ」 「そうかな……追い返されなきゃいいけどなあ」 「そんなことまで気にしたって仕方ないだろ。あ、ヤーマさんだ」  きしいと音がして、少し重めの扉が開く。あまり乗る者がなくなったというマートルンの駅舎にしては、どことなく質素な清潔さがあった。もしかしてここがピンクフーラへ行くための駅だからあえてそうしているのかと思ったが、そうではない様子だ。いつかの宿屋のように病的なものではなく、きちんと手入れのされている雰囲気。今開けたばかりの扉にしても、少しきしんだ音はしたものの動きはとてもスムーズであった。 「……れ?」  切符売り場は無人だった。かといって自動券売機のたぐいがあるかというとそうではなく、まるで業務の途中ですべてをすっぽかしたか神隠しにでもあったかというような様子で、カウンターには誰ひとりいなかった。 「おかしいね。なんで人いないのかな」  五月が首をひねる。何かあったんではないか、と考えだすあたり、この三人はある意味で成長しているのかもしれない。 「捜してみましょう。切符を買わないことにはマートルンにも乗れませんしね」  景がそう言ったとき、背後できしいと音がした。 「お前たちか、マートルンに乗りてエってのは?」 「え」  言われて振り向くと、そこに立っていたのは男性だった。景の父親と同い歳――くらい、だろうか。まるで何かの職人のようなごつごつとした手を腰に当てて、今自分が開けた扉を眺めている。 「もう少し油か何かさすべきだな、軽さが足りん」 「……あのう……あなたは」 「乗りに来たんじゃねえのか。ピンクフーラ行きのマートルンに」  言って、男性はそのままカウンターに入っていく。博希たちのことは、そこまで走ってきたマートルンの車掌にでも聞いたのかもしれない。してみるとこの男性が、切符売りなのだろう。椅子に腰かけて正面を向くと、ぶっきらぼうながらも営業的な口調に早変わりした。 「おう。ひとり、ひと駅五コルーだ」  その料金の跳ね上がりぶり。今までがひとりひと駅一コルーだったことを考えると、やはり路線が違うことの保険か何かなのかもしれない、と景は思った。 「で、どこまで行く」 「え……ああ、ええと、ピンクフーラにはいくつ駅が?」 「ふたつだ、こいつアほかの都市と変わらん。ひとつはフーラゲインにある。――もうひとつは――その次の駅になるが……フーラモリナの奥だ」  フーラゲイン。その村の名を聞いて、景は無意識のうちに背中に手をやった。この名前、きっと、忘れようとしても忘れられないだろう。今、どうなっているかは解らないが、少なくとも執政官がいないから、以前のような息苦しさはないと思いたい――――。  しかし今の景には、再びフーラゲインへ足を踏み入れるような度胸はなかった。 「ならばひとつ先の駅まで行きます」  考える時間は、この間、ほとんどない。博希がこそり「そりゃそうだよなあ」と言うのが聞こえた。 「フーラモリナまで……? どうでもいいがお前たち、旅人だろう。何しに行く」 「旅人ですから、旅ですよ」 「じゃフーラゲインでもいいだろう。わざわざひとつ先まで行くこたねエ」 「ぼくらこの前フーラゲインに行ってるの。だから次に行きたいんだけどな」  五月がしごく常識的な説明をした。真実、博希にとっても五月にとっても、その理由で十分なのだ。 「……あそこの村はなあ……あんまりなあ……」  男性が言い淀む。今更、何か問題が、と聞くつもりは当然ない。ないわけがないからだ。問題が。 「なんかあっても別に構わねーけどもな。俺ら、もっと広い世界見てーんで旅してるんだしさあ」  博希がきらきらした瞳でいたずらっぽく言った。思わず、景は苦笑する。言っていることは確かにある意味間違っていないと思う、ので。 「僕も博希サンに同じです」 「あっ、ずるい、ぼくもっ」  景が手をあげた直後に、五月もはいはいと手をあげる。それを見た景は、男性に向かい、にっこり笑った。 「――そういうことです。売ってはいただけませんかね、三人ふた駅ぶん――三十コルーです、よね」  財布を握りしめ、――このときの本人たちには解らなかっただろうが――好奇心の塊といったふうに瞳を輝かせながら男性ににじりよる三人。ある意味では異様な光景であるけれども、この際そんなことは言っていられない。切符さえ手に入れば、気難しいという運転手もマートルンを動かしてくれるかもしれない。 「……解った、切符を売ろう。だがあの村行って後悔するんじゃねエぞ」 「後悔ね……、別にしねえな。たぶん」  にいと博希が笑った。 「……不思議な小僧どもだなどうも」 「なんで」 「わざわざそういうトコに首突っ込もうとする旅人なんざ、俺ア初めて見るからさ」  何年も、何年も、旅人を見てきたが。お前たちみたいなのはいなかった――こと、世界が【こう】なってからは。男性はそう言うと、景に二枚の切符がついた紐を三組預けた。そうして、景から三十コルーを受け取ると、手の中でちゃりちゃりともてあそびながら、少し、考える様子を見せる。 「運転手の方はどちらに? 話によれば、お気に召さないときは運転なさらないとか聞いたのですが?」 「交渉する気かお前ら。乗せてくれるようにとでも?」 「だあって行きてえんだもんピンクフーラ。直接、気に入ってくれるまで、頼み込むつもりだぜ、俺」  多分五分も頼めば飽くのではないか博希サンは、と景はひっそり思う。もともと粘り強い性格ではあるけれど、食物とかそういったものが絡まない限りはきっと飽きるだろう。そうなれば交渉は自分がするしかないが、しかし、景としては交渉に飽きるつもりはなかった。乗せる、と言われるまでは。 「ふん」  男性はほんの少し、鼻で笑った。馬鹿にされたか、と、三人はほんの一瞬そう思う。 「よこせ」 「え」 「切符だよ。今渡した切符、よこせ」  カウンターの向こう、男性は丸太ほどもある太い腕をぬっと出す。 「なんでだよ? 今買ったばかりだぞ」 「返せとおっしゃるなら返金いただけるんでしょうね?」 「あっ、だめ、取ってっちゃ」  せっかくの切符、取られてなるかと三人は紐をしっかりと握った。しかし、男性が次につむいだのは、意外な言葉だった。 「勘違いすンじゃねえ。出してやる、マートルン」  …………なんだって?  博希が笑っていいのか、喜んでいいのか、怒っていいのか、よく解らない、ひどく中途半端な表情でそう言ったとき、三人の切符は男性の手にひったくられていた。 「乗せてやるって言ってるんだ。俺のマートルンに」 「……じゃあ、おじさんが、運転手の人……?」 「乗せるって、それでは、フーラモリナまで、ですか!?」 「三度は言わねエ! 乗りたきゃ来な、切符二枚買いやがったんだ、ノンストップでフーラモリナまで走るぜ!」  つい先程まで食いつくように男性に顔を近づけていた博希たちのように、男性もまた博希たちにぐんと顔を近づけた。白い歯も輝かしく、その笑顔は博希たちに勝るとも劣らぬいたずらっぽいものだった。  先に切符売り場を出た男性の背中を見ながら、三人はほんの少しここから先のことを懸念する。 「……行っちゃって、大丈夫かな?」 「おっちゃんが乗れっつってんなら、それを聞かない理由はねえと思うけどよ」  それにしても急にそんなことを言い出した理由が解らない。切符売り場の男性が運転手だった、それだけは今間違えようもない事実だろうが、博希たちを乗せてくれると決めた理由が。 「気難しい人のはずではなかったんですかね? ……まあ……それでも……乗せてくれるというなら、乗りましょう」 「……本気かあ?」 「ええ。何か起こったとしても、鎧装着すればいいんですし、――もし――万が一、五月サンが、鎧装着できなかったとしても」  五月がどきんと震える。 「相手は、お一人です。僕と博希サンが、五月サンを守ればいい。そうでしょう?」  五月は何か言いたそうに口をぱくっと開けた。しかし、つむぐべき言葉がすぐには見つからなかったとみえて、すぐに閉じる。 「まーよ、あのおっちゃんが、俺らの正体知ってるわけはねえだろうしな」  博希もちょっと眉根にシワを寄せて、腕を組む。だがここで考えれば考えるほど、時間は無駄に過ぎてゆくだけで、うっかりするとあの男性がへそを曲げてマートルンを運転してくれなくなる可能性だってある。 「迷っている時間は、ないと思いますよ、僕は」  いつになく積極的な景の言葉に押されるようにして、博希と五月は握りこぶしを出した。  何があっても、三人なら。たぶん。  ちょん、と拳を突き合わせて、彼らは切符売り場を出た。 「おわ」  予想に反して、マートルンの中は美しく磨かれていた。確かに古いといえば古いが、その古さも美しさのひとつというか、まるでよく整えられた歴史資料館のような見事さがある。 「動くのですか、これは」 「あったりまえだ。俺が毎日磨いてやってんだぞ、……試運転はめったにしないが……ま、すぐ出すから、適当なところに座れや」  ここまで乗ってきたものと違って、このマートルンは小さいものだった。運転手と直接話のできる距離感。今そこまで乗ってきたものが特急列車とするなら、これはローカルなワンマン列車のようなものですね、と景は思った。よほど乗る人間がいないのだろう、車両は一両だったしあちこち古びてはいたけれど、男性の言うとおり毎日磨かれているせいか、錆の浮きとか座席から綿がはみ出しているとかそんなみっともなさはなかった。 「うわー、なんか、タイムスリップしたみたい」 「俺、じっちゃん家に遊びに行ったとき、こんな感じの電車乗ったことあるぜ! 車掌がいねえの、運転手だけの、二両くらいの電車」  博希の祖父は田舎住まいである。それこそローカルワンマン列車のことであろう。まがりなりにも都会に暮らす三人にとって、【小さな電車】は非現実な日常なのである。 「出発ウ――――――」  男性が大声を張り上げると、マートルンがカタンとレールを刻み、滑り出した。 「動いたあ」 「はっは、どうだ小僧ども。こんな小せェマートルンに乗るのは初めてか」  気持ちよさそうに胸をはる。景は 「――ええ、今まで、ずいぶんたくさん車両のあるものにしか乗ってなかったもので」  と答えておいた。嘘は言っていない。男性はその反応に気をよくしたのか悪くしたのか、ぽつりとしゃべり始めた。 「……だろうなア……。この形のマートルンはだいぶ減っちまったからな」 「おじさんはずっと乗り換えの人なの?」  乗り換えの人、という言い方が正しいのかどうなのか、博希と景には解りかねたが、男性にはニュアンス的なものは伝わったようであった。 「ずっとな。世界がバラバラになって、マートルンがひと続きにならなくなる前も、俺は運転手だったよ」 「この電……あ、マートルンも、動いてたの」 「一応な、夜中は乗る人間も少なくなるから、その時間専用に動かしてたんだ。――レールが切れて――それぞれのマートルンがいちいち乗り換えしなきゃならなくなって――それで、コイツも久しぶりに日の目を見たが、今度は今までの夜中以上に人が減っちまった。駅員も一人去り二人去り、俺が最後の一人さ」 「ひとりで、駅とかマートルンとか、磨いてたの」 「……ここが廃線になるって話もあった。――総統の、……考えらしかったが」  マリセルヴィネもいらん事を言い出すヤツだ、ま、あいつならさもありなんて感じだけどもさと博希が小さな声で毒づく。 「それでも、な。いつか、レールがつながる日を待って――お前たちみたいな旅人が「乗せてくれ」と言ってくる日を待って――俺ひとりで、駅舎を磨いたし、マートルンも整備した。誰かひとりでもこの路線の、このマートルンに乗るヤツがいる限り、廃線になんかしちゃいかん。潰しちゃいかん――俺はそう思う……」  一両編成のマートルンは静かにすべる。 「大丈夫ですよ」 「なんだ?」  景がぽつりともらした言葉がよく聞き取れなかったらしい。大きな声で、男性は聞き返した。 「大丈夫です、と言ったんです。あなたの思いがある限り、ここは廃線になんかなりませんよ。続いていきますよ」 「フン、言うじゃねエか」  この男性が【昔気質】と言われる理由が解ったような気が、景はした。客が気に入らないというのではなく――もちろん一部ではそういうこともあっただろうけれど――自分が運転するに足る状態に、マートルンがなってくれているかも大事だったし、いまだ治安のよろしくない地域に足を踏み入れるだけの覚悟が客にあるかどうかも、彼は見ていたに違いなかった。本当はできるならしょっちゅうでも運転したくってたまらないはずなのだ。車両を見れば、彼がどれだけマートルンを、そしてこの仕事を愛しているか、よく解る。  景は遠くアイルッシュの、自分の父親をなぜか思い出していた。 「停車ア――――――」  男性の大声が響いた。  今度は前と違って、ふた駅分だったし同じ都市内だから、たいして時間もかけず到着することができたが、日はすっかり暮れている。 「宿を探さなくてはなりませんね」  すでに眠たそうな五月をゆりゆりと起こして、博希は「だな」と同意した。 「ありがとな、おっちゃん。レール、つながるといいな」 「そう言ってくれるだけでありがてエよ。こっから先、気をつけてな」 「どうもありがとーう」 「ありがとうございました。あなたも、お気をつけて」  男性に手を振って別れると、三人は辺りを見回した。 「入るとき、何も言われなかったよね?」 「特には、な。つまりそんなに厳しいトコでもねえんだろ」  しかしそれがマートルンに乗ってきたせいなのか、はたまた夕方も更けてきたせいなのか、本当にガードの甘い村なのか、そこまでは量りかねる。見たところ家々にはちらほらと灯りがともり、無人である様子はないようだ。よい匂いも漂ってくる。 「あー、早いとこ宿探そうぜ。腹減っちまったよ」 「そうですね、とりあえず、」  景がそう言ったとき――駅の近くで、かん高い悲鳴がした。 「出てってよ! 入ってこないでっ!!」

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