ビルゲ・トニュクク回想録――超訳突厥碑文

読了目安時間:2分

エピソード:1 / 1

前へ

目次

次へ

 トニュクク碑文の冒頭を小説風にして見ました。  初めの二段落は、第三者目線の時代背景の説明です。  第三弾目以降は、トニュクク目線の回想録になります。

全一章

儂は賢いトニュククである。

 嘗て、大唐国の繁栄は日本にも多大な影響を与えた。その顕著な遺産は漢字である。それ故、大唐は恰も漢人の国の如く見える。北狄からはタブガチュと呼ばれた。  強大なタブガチュにも強敵が居た。北狄のテュルクである。その強盛の前に、タブガチュも平伏すこと屡々でった。驕れる者は久しからず。タブガチュにテングリ・カガンが現れると、逆にテュルクは軛を架された。テングリ・カガンの御魂が神上がった後も、テュルクは未だタブガチュの踵の下に居た。しかし、それに抗う者たちも残っていた。  儂はビルゲ・トニュククである。我が物心ついた頃、我らテュルクはタブガチュの内に居た。テュルクの民は、何の疑いもなくタブガチュを仰ぎ見ていた。  この時、テュルクにはカンがおらず、タブガチュのカンに扱き使われていた。タブガチュは甘い言葉と柔らかい絹でテュルクの民を惑わし、手元に引き寄せ、軛を架した。タブガチュの掟は細かく厳しく、少しでも違えれば、厳しく咎めだてられた。時には根絶やしにされた。  タブガチュの軛は耐え難く、遂に民はカンを立てた。しかし、愚かな民は自らカンを立てておきながら、自らのカンを見捨ててしまった。そして再びタブガチュに従った。これを御目にしたテングリは嘆かれて仰せられた。 「我は汝らにカンを賜えた。しかし、汝らは自らのカンを見殺しにした。そして、恥じることなく再びタブガチュに従った。汝ら死ねよ!」  こうしてテュルクの民は滅び、何もかもが失われてしまった。  しかし、僅かに生き残った者たちも居た。その数は七百(ななお)ほどである。その中、三人に二人は馬乗りであった。残りの三人に一人は、乗る馬もなく徒歩(かち)立ちであった。これら七百(ななお)の者を率いるシャドがいた。その名をクトルグという。やんごとなき血筋、テュルクのアシュナスの家の者である。彼は皆々に声を掛けて集めた。その時、集まった者の一人が儂である。  儂はビルゲ・トニュククである。テングリが儂にお告げを賜えた。儂はクトルグ様の前に出て申し上げた。 「アシュナスの末々、やんごとなき御血筋のクトルグ様、カガンに高御座に御付き下され」 「我は其の器であろうか?」 「古の諺ではこう言います。痩せた牛と肥えた牛が遠くに居た所で、その牛が痩せてるのか、肥えてるのかなど誰にも判りません。つまり知らないことは誰にも判らないのです。しかし、クトルグ様がカガンに立てば、その噂は風に乗って地の果てまで届きましょう。さすれば、皆はクトルグ様が聖き牛であることを知り、御身の御旗の下にゾロゾロと集まって来るでしょう」  クトルグ様は、わしの申し出を善しとされた。そして自らエルテリシュ・カガンと成られた。儂にはビルゲ・トニュクック・バガ・タルカンという誉ある名を賜えて下さった。後に、南にタブガチュを抑え、東にクタニュを討ち、北にオグズを滅ぼした。儂は賢いチャブシュとして戦の手配りをし、カガンを大いにお輔けした。

 続きを書く気は、あまりありません。

前へ

目次

次へ

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る

読者のおすすめ作品

もっと見る

  • あじさい色のアミィ~永久に枯れない花束を~

    全てのメイドさん好きの方に捧ぐ

    0

    0


    2022年12月10日更新

    アンドロイドの普及が進み、アンドロイドが『第二の人類』とまで呼ばれる域に至った近未来に、『響 恭平』の元にやって来たメイドアンドロイドの『アミィ』。 アミィは表裏のない素直な性格で、やや気弱で真面目すぎるところはあれど、基本的には主人のために全力をもって仕事に臨む気概を持ったメイドである。 そんなアミィは、恭平の為にメイドとしての仕事をこなそうと奮闘するが、そんな意気込みとは裏腹になぜか失敗の連続で、アミィの中に徐々に自責の念が積もっていく。 恭平はアミィが気楽に仕事に臨めるようにと、アミィを強く咎めることはなかったが、そんな恭平の気遣いは生真面目な性格のアミィには逆効果だった。 そして、自責の念が臨界点まで達したアミィは、ついに恭平に対して思いの丈を爆発させてしまう。そんなアミィを見て、恭平は自分の配慮がいかに軽薄だったのかを痛感する。 だが、それをきっかけとなって、恭平にメイドの主人としての自覚が芽生え、結果としてお互いを再認識することとなり、心機一転、改めて主人とメイドとしての共同生活をスタートさせる。 そんななか、とあるいざこざが引き金となり、アミィの中で、もうひとりのアミィが目を覚ます。 そのアミィは大胆不敵にして徹底したリアリストで、メイドの仕事とは縁遠い卓越した戦闘技術と相手の精神を揺さぶる話術、そして、筋が通らない事柄を見逃せない熱い義侠心を備え持っていた。 時には温厚で控えめ、時には好戦的で現実主義というアンバランスな性格を宿したアミィは、様々な人間やアンドロイドと触れ合いながら様々な出来事を経験し、やがては主人とメイドという枠を越え、恭平と共に道ならぬ険しい恋路を歩んでいく。 そして、その恋路のあらゆる箇所に横たわる二人目のアミィの出生の謎をきっかけに、恭平達は世間を揺るがす大事件へと巻き込まれ、立ち向かい、出会いと別れを繰り返す。 その事件の裏に幾度も登場する二人の男と一人の女。その三人の因縁はあらゆる事象を巻き込みながら交錯し、やがて二人目のアミィの存在そのものへと集約されていく。 この物語は、人工知能が進化を重ねた未来に於いて起こるであろう、人間と人工知能の共存によって生じる正の側面と負の側面を、二人の愛を通じて描いた物語である。

    読了目安時間:31分

    この作品を読む

  • 私、メリーさん。今、あなたと色んな物を食べているの

    特に、お味噌汁と唐揚げが好きなの

    189,987

    2,128


    2022年12月7日更新

    「私、メリーさん。今日、不思議な人間に出会ったの」 都市伝説であるメリーさんが出会ったのは、背後に立っても慄かず、一杯の味噌汁を差し出してきた人間。 その味噌汁を飲んだメリーさんは、初めて食べた料理に衝撃を受け、もっと色んな料理を食べてみたいと願い始めた。 片や、毎日を生き延びるべく、試行錯誤を繰り返す楽天家な人間。 片や、ただ料理を食べたいが為だけに、殺す事が出来ない人間の家に毎日現れる都市伝説。 互いに嚙み合わないずれた思考が平行線のまま続くも、一つの思いだけが重なっていく日常。

    読了目安時間:6時間32分

    この作品を読む