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「やっぱり恋人にかっこいいって思われたいなって」 小型犬のようにころころ表情が変わり、ひょろりと背が高く、筋肉がつきにくい体質の男性・巣鴨雄大は、かっこいいというよりは――甚だ彼にとって遺憾だろうがかわいらしいに分類されがちな男性である。すまして立っていたならばかっこいいかもしれないが、ころころと変わる表情は子どもらしさすらある。 ましてや、彼の恋人である本条晶は柔らかさとは無縁な筋肉に加えて、百八十を超える長身であり、乾かすのが面倒臭いからと短く切りそろえた髪型をしている。後ろから――正面から見ても男性に見間違えられるような人物である。 そんな恋人にかっこいいと思って貰うために、彼は最近出来た年上の友人・妋崎に相談を持ちかける。 「少なくとも相手の基準が分からないとだめでしょ」 「ですね。晶ちゃんのかっこいいに当てはまるかっこいいところを磨きます!」 「……いや、たぶん君の場合、かわいいところを磨いた方が絶対ハマると思うんですけどね……」 これはかっこいいを模索する青年のある日の一日である。 ※「私とわたしの日々是好日」(https://novelup.plus/story/100672697)の外伝小説です。個人サイトにも掲載しています。 illustration by @inadananten
読了目安時間:32分
「愛する人と過ごす日々は、いつだって素敵で素晴らしい日である」 これは、愛しい人とともに生活する人の話。 ※2021/05/15 改題しました。 家事はできないが仕事はできるキャリアウーマン・絢瀬は、家事も仕事もできるイタリア人の恋人・ヴィンチェンツォと同棲している。 朝は一緒にご飯を食べて、夜は一緒に布団に入る。そんな彼とのゆっくりと、そして優しく甘い日常の話。 連作短編形式なので、思いついたときに増えます。 どの話も世界観は共通ですが、基本的に時系列は繋がっていないので、どこからでも読めます。 気に入ったらスタンプなど感想をいただけると大変嬉しいです。 ※要素は限りなく薄いですが、性行為を匂わせる文面がないとは限らないので、セルフレイティングをつけております。 期待させるほどのものはありませんので、ご容赦ください。 個人サイト、カクヨムでも同内容のものを連載しています。 illustration by @solaris_st
読了目安時間:5時間42分
「おとーさんとおかーさんは、どうして結婚したの?」 娘・愛里紗からの問いかけに、父・和義は目をぱちくりさせる。もうそんなことが気になるような年頃なのかあ、と娘の成長になんとも言えない顔をしながら、そうだねえ、と言う。 「好きだから、結婚したんだよ」「ふーん?」 すこぶる興味のなさそうな娘。興味がない、というよりはあれだ。もっとドラマティックな理由があると思っていた、と言うのが近いかもしれない。最近、娘は少女漫画にどっぷりハマっているものだから。 「ねえ、結婚するまで、どのくらいかかったの?」「そうだなあ、一年くらいかなあ」「そうなんだ。ねえねえ、いっぱい大変なことあったの?」 少女漫画にあるようなことを期待している娘に苦笑しながら、和義はそんなことないよ、と言う。えー!と文句をいう娘を落ち着かせながら、そうだね、と和義は切り出す。 「結婚するまで、毎月何があったか教えてあげよう」「わあ!気になる!」「そうだねえ……まずは付き合うところからだね」 出会いは大事だもんね。そう和義が笑うと、そうだよ!と娘はしっかりと同意した。 山も谷もドラマティックも、全部フィクションに任せればいい──和義の妻・葉月がいうように、二人の恋路にドラマティックなものはない。そう、これは、少女漫画のようなドラマティックな話はなく、恋愛ドラマのような大逆転劇もない、どこにでもいるありふれた大学生だった二人が織り成した恋愛の思い出なのだ。 毎日16時半更新予定です。
読了目安時間:1時間10分
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「私、メリーさん。今日、不思議な人間に出会ったの」 都市伝説であるメリーさんが出会ったのは、背後に立っても慄かず、一杯の味噌汁を差し出してきた人間。 その味噌汁を飲んだメリーさんは、初めて食べた料理に衝撃を受け、もっと色んな料理を食べてみたいと願い始めた。 片や、毎日を生き延びるべく、試行錯誤を繰り返す楽天家な人間。 片や、ただ料理を食べたいが為だけに、殺す事が出来ない人間の家に毎日現れる都市伝説。 互いに嚙み合わないずれた思考が平行線のまま続くも、一つの思いだけが重なっていく日常。
読了目安時間:2時間8分
ズヒューン、相手のライフルから発射されたビームが動力源の核融合炉を貫いた。ドカーンという轟音とともにその機体が爆発した。 「野郎!」と仲間の死に激高した彼はその機体を追った。「待て。退け。重力に捕らわれるぞ。」という上官の声は彼の耳には届かなかった。 しばらくすると彼の機体は大気との摩擦で真っ赤に染まった。「しまった。」と彼は思い、引き返そうとしたが強大な重力に逆らうほどの推力は出せない。 機体は崩壊をはじめ、恐怖におののいた彼は「助けてください、少佐!」と叫んだが、通信機能はすでに破壊されていた。 実はこの一文には科学的には正しくない表現が含まれています。 物語だから、フィクションだから、異世界だからで片づけてしまうのはもったいない。 科学的に正しい表現を使うことで、物語に厚みと説得力が出てくるはず。 それに、科学は創作のネタの宝庫と言っても過言ではありません。 「錬金術」など科学そのものです。 科学を知れば物語が生まれてくる。 そんな創作と科学のコラムです。
読了目安時間:5時間13分
俺たちは、こうしてゆっくり恋をする。
739,600
3,170
恋愛/ラブコメ
連載中
長編
174話
636,082字
2022年6月24日更新
特殊な事件を取り扱う警視庁刑事部特殊犯罪対策課——略して特課。櫻場宏斗は特課の刑事として、都市伝説に近い事件ばかりを追う日々を送っていた。 そんな櫻場の前に、高校時代に苦手意識を持っていた後輩の真島崚が現れ、なんとコンビを組むことに。 「一日も早く先輩の右腕になれるように頑張ります。よろしくお願いします」 そう言って差し出してきた真島の手を、櫻場は取ることが出来なかった。 気まずさと苦い記憶を抱える櫻場だが、事件は容赦なく特課を巻き込んでいく。 果たして二人は、次々と起こる不思議事件を解決することが出来るのか。 同時にゆっくりと進んでいく、恋の行方は――。 全10話予定。 毎週火曜日・金曜日の朝に更新中。第一話はBL成分が薄めですが、第二話以降徐々に濃くなっていきます。 ※表紙イラストはナカジ⭐︎マジカさんが描いてくださいました。
読了目安時間:21時間12分
《至急至急!自称勇者と名乗る男が暴れているとの申報》 【3月28日第一部完結しました!!!!】 ある日、I県とC県の県境に、異世界の大陸が地震と共に出現した。 現代日本と文化も種族も原生植物も違う大陸、【ガーランド王国】。 ゴブリンは畑を荒らし、ドラゴンは空を飛び、異種族が不法入国してくるわの大騒ぎでI県警は大パニック。 そんなこんなで県警だけでは対処しきれないと、政府が対応に乗り出した。 種族雇用均等法。正規の移民手続きを経て戸籍を獲得した者は種族問わず日本国で仕事ができる。 それは、警察官も例外ではない。 異種族相手に少ない人員で対応できないと、I県警は種族にかかわらず警察職員の採用を始めた。 今日も異世界との境にある境島警察署の警察官達は、不法就労の異世界人達を強制送還し、自称勇者や騎士を職質するのだ。 元リザード族戦士の 毒島(ぶすじま)巡査部長。 鑑識一筋ドワーフ族 土井頭(どいがしら)警部補。 オーガ族 会計課長 緒方(おがた)課長。 エルフ族 江田島(えだじま)主任。 亡きガーランド王の二男、新人巡査 ユリウス・フォン・ガーランド巡査 個性豊かな面々が、今日も地域の安全を守っている。
読了目安時間:6時間44分
『こたつ、温まっています』 大都会。そそり立つ超高層ビルの森とアスファルトの大地で覆われた世界から、一歩奥へ踏み込んだ路地の裏。 人々の雑踏や喧騒から切り離されたその場所に、そんな珍妙な看板を掲げる喫茶店があった。 「あら。いらっしゃいませ。ここに人間が来るのはずいぶん久しぶりね。どうぞ、ごゆっくりなさって?」 くすくす。と、楽しげに微笑む妙齢の店主がそう言えば、人形のように整った見目の少女が瞬き一つせず席に案内してくれる。 案内されるまま、洒落たカウンター席に腰を下ろし、ぐるり。と、店内を見回せば。窓際の日向席でまどろむ有田焼の狸が髭を揺らし、奥の席からは、きゃっきゃとはしゃぐ子ども達の声だけが聞こえてきた。 不思議な場所には間違いない。だが、どういう訳か、不気味ではなく心地よい。 落ち着いた雰囲気の調度品のせいだろうか。それとも、穏やかに歌う古いレコードのせいだろうか。 その訳を、揺れる髪からコーヒー豆の香りを漂わせる店主に聞いてみる。そうすると、店主は人差し指を口に当て、悪戯っぽく微笑んだ。 「実は……。ここは、幻獣たちが集まる喫茶店なんですよ?」 どうぞ、ゆっくりなさってください。ここでの時間は、あなた達の時計よりもゆっくりと過ぎていくのですから。
読了目安時間:2時間10分