スキンヘッドにヘッドホンとサングラスを常に着用しているどこか怪し気な千田喜樹(せんだ・きじゅ)と、男前だが不愛想で無口な角力然(かどりき・ぜん)。 そんな二人が商店街の一角で営んでいるのは、朝飯屋も兼ねた「千力探偵事務所」だ。 朝飯屋はともかくとして、探偵事務所のほうはほとんど訪れる人もおらず常に閑古鳥が鳴いている。 しかし暇そうに見えるその裏では、千里眼を持つ喜樹が察知した事件や事故を、念力を使える然が主となって秘密裏に防ぐという日々を送っていた。さらに喜樹には「喜師様」と呼ばれる別の顔もあり……。 運命共同体となってしまった男たちのBL+超能力+探偵+朝飯のお話です。
読了目安時間:4時間42分
明け方を指す「カハタレドキ」ーーそれはやがて、二人にとってかけがえのない時間となっていった。 高校一年生の三学期、寮替えに伴って、2号館寮長の高森と同部屋になった小野田。 小野田は、幼いころ骨折してまで自分のことを救ってくれた日花里を、いつか自分がヒーローとなって守りたいと思っていたが、自分の兄と日花里が結婚し実家で同居を始めるのをきっかけに寮のある鐸明高校へと入学し、いまだに恋愛にも興味を持てずにいた。 一方、高森も彼女がいないようであったが、実は前年に同室だった同性の先輩を好きだったようだという噂を聞き、小野田はそれが本当なのか気にするようになっていく。 小野田のランニングのために毎朝ふたりきりで過ごす時間を重ねるうちに、二人の仲は徐々に縮まっていくが…… 小野田目線で語られる、高校の寮での日々の物語。
読了目安時間:7時間32分
*「BOYSFAN」BLコミック原作小説コンテスト 「お題フリー」投稿作品です。 セフレ関係にある大学時代のサークルの純也先輩が、創(はじめ)の家に持ってきた、水色の大きな椅子。引っ越すまで預かっていてほしいと言われた創は、ヴィンテージ品だというその椅子に合う部屋作りをしようと思いたち、唯一、先輩と創の関係を知っている、高校時代からの親友の玉木に相談する。玉木からSNSを見て参考にしてみたらいいのではと助言を受け早速アカウントを作った創は、そこで理想の部屋を見つけてフォローをはじめ、まずはテーブルを買おうと探し始める。 しかしそれからすぐ、純也先輩が自分もお世話になったサークルの元部長と婚約したことを知った創は、玉木や理想の部屋の持ち主である洋平を支えに、少しずつ先輩への気持ちにけりをつけるべく努力していくことになった。そして、前の恋を忘れるには新しい恋をするべきではないかと考え、初めてゲイバーを訪れた創は、大阪から出張で来ているというまさるに口説かれる。その日は何もなく相談だけして終わったが、翌月、どうしようもなく孤独感にさいなまれた創は、また東京にきたまさるに抱いてもらえないかと頼み、二人はセフレとして遠距離で逢瀬を重ねるようになったのだ。 年末も近づき、純也先輩が引っ越すと聞いた創は玉木に付き合ってもらい椅子を返しにいき、部屋にぽっかりと空いたそのスペースにいつか恋人のために赤い椅子を置こうと心に決めるが、自分がどんな未来を求めているのか悩んでいくことになる。 洋平にも告白され、まさるにも真剣に付き合おうと言われ、玉木にはキスをされ混乱する創だが、玉木と仲良くなっていた女の子から、ずっと側にいてくれた玉木の気持ちを聞かされようやく自分の気持ちにも向き合うことになる。 そして、ちゃんと気持ちを伝えようと玉木を呼び出した駅で、赤い椅子を持って現れた玉木に逆に告白され、二人はついに恋人となったのだ。 ヴィンテージの雑貨や家具などを一つずつ集めつつ4人の男と向き合い、理想の部屋と理想の恋人を作るために試行錯誤する、不器用な「#一人暮らし男子」の一年間のおはなし。
読了目安時間:6時間54分
ヴィンテージ食器を扱うカフェの店長である裕久には、10歳年上の賢哉という恋人がいる。周りから仲睦まじいと思われている同棲中の二人だが、真実はまったく違うものだった。裕久には琴子という姉がいて、その姉は夫である賢哉を裏切ってアメリカ人と駆け落ちしてしまったのだ。しかも、賢哉の口座から300万円と言うお金を引き出して。 そのため、裕久は、賢哉と一緒に住んで家賃を浮かせて琴子が持ち逃げしたお金を返しつつ、賢哉の家の家事を一手に引き受け、同時にゲイだとカミングアウトしたことにより、しばらく女性とは関わりたくないと言う賢哉の恋人役も担うこととなった。 そんな嘘だらけで始まった関係性ではあったが、思っていたよりもずっと穏やかで心地いい日々に、裕久は少しずつ賢哉に惹かれていく。 個性豊かなスタッフ、穏やかな商店街の人たち、それぞれ悩みを抱えたお客たち……アメリカンヴィンテージに囲まれたカフェを舞台にした2年間のストーリーです。 *各章ごとの写真は、すべてオリジナルです。
読了目安時間:7時間2分
*「BOYSFAN」BLコミック原作小説コンテスト 「お題フリー」投稿作品です。 夏休み、亡くなった大叔父である誠さんの家の片付けを請け負うこととなった健斗は、その家で地縛霊だと名乗る若い男と出会う。奥さんも子どももいないはずの誠さんのことにやけに詳しいその男は、自分も手伝うと言って、その日から健斗と一緒の布団で寝起きするようになる。 地縛霊ではないだろうと思いつつも、スマホすら持っておらず、家から一歩も出ようとしないその男に「ナナ」という呼び名をつけた健斗は、口喧嘩をしながらも徐々にナナを信頼していくようになる。 一方、片付けを手伝いにきてくれた本家のお嫁さんである香苗さんは、あまりにも陰気で水墨画に描かれていそうな人であったが、実はアメリカ生まれアメリカ育ちで、英語のほうが得意だということが分かる。そんな彼女の提案で、アメリカでは遺品整理の一環としてメジャーである「エステートセール」を行うことに決まり、その宣伝要員としてちょっと前に健斗が別れたばかりの可南ちゃんも加わり、誠さんがコレクションしていた、多くの古いものたちを新しい場所で大事にしてもらうために4人で協力して動き始める。 そんな毎日の中で、バイだと言うナナになにかと振り回される健斗は、ナナの「心身ともに愛してもらえたら成仏できるのに」という言葉の重みを日が経つにつれて徐々に感じるようになり、地縛霊だと嘘をついていたナナも健斗の特別になりたいと本気で思うようになるにつれ自分は分不相応なのではと考えるようになり、お互いがお互いの未来のために悩むようになっていく。 最後、健斗の真っ直ぐな思いに覚悟を決めたナナは、真実をつげないまま誠さんの家を去り、本家で行われた誠さんの遺産相続の場に臨んだ。初めて知る事実に驚きながらもナナは誠さんの思いを受け取り、香苗さんが離婚するきっかけを作ることに成功する。 そして、すべてが終わって健斗のもとへと帰ったナナは、今度こそ恋人となり、その15年後。二人は3人の子どもとともに、取り壊される予定の誠さんの家を訪れたのだ。 誠さんの恋人だった男性、香苗さんに精神的DVを働く義理の家族、本家の財産を狙う親戚たち。 自分たちのことだけでなく、そんなさまざまな人や問題とも向き合いながら、遺された「もの」たちのために仲間とともに奮闘し、それぞれの未来を見つけるひと夏の物語です。
読了目安時間:12時間8分