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漫画家の瓜生明日香(うりゅうあすか)は、生活が不規則なため、締め切りに追われている時は、何かと隣人の伊藤翼(いとうつばさ)に頼る生活をしていた。 物理的にだけではなくて、心のよりどころにもなっている、恋人でも、友人でも、ただの隣人でもない、名前のない関係。 でも、一番大切な人だ。 ある日、明日香は翼の部屋から見知らぬ男が出てくるのを目撃してしまう。自分が仕事に追われている間に、翼は引っ越していなくなってしまったのかとショックを受けるが、実は、わけあって、親友の浅川流(あさかわりゅう)を、自分の家にしばらく泊めているだけだと翼は言う。 安心したのも束の間、前々から明日香の部屋のベランダで起きていた怪奇事件が悪化し、どうにも自分の家にいらなくなり、彼女もまた、翼の部屋でしばらく暮らすことになる。 そうして、狭いワンルームでの三人暮らしが始まった。 鬱陶しいけど愛しい日々。 大人の青春ストーリーです。
読了目安時間:3時間36分
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いつ、誰が言い出したのかは定かでないが、人々の間で囁かれている噂が一つ。 曰く、この世のどこぞに人の一生を見通せる魔女がいるとか。 曰く、その魔女に分からない事はないのだとか。 曰く、その魔女の元へは強く望んだ者しか辿り着けないとか。 曰く、その魔女は誰をも虜にする絶世の美女だとか。 曰く、曰く…… * どの世界にも存在し、どの世界にも属さない狭間の異境ーー朧邸。 魔女が住むと言われているその邸に、ある日瀕死の『少年』がヒトリ流れ着く。全てを失くしていた少年は、美しい魔女に心惹かれるも、彼がこの邸に居られるのは『この傷が癒えるまで』。 いつまでも魔女の側にいたいと願う少年は、毎夜見る夢で過去のカケラを拾い集め、魔女の元に訪れる様々な客たちとの出会いで己が人ならざるものであると気づく。 「主様の傷を癒すためとは言え、主様を此方こなたに留め過ぎた……主様とその世界との繋がりが、縁えにしがもう消えかかっておりんす。 これ以上主様が此方に留まれば、二度と元の世界へは帰れなくなりんしょう」 約束の日。揺れ動く少年の心に気づいた魔女は、究極の選択を突きつける。 「主様が、帰るのを怖いと感じる気持ちも理解できんす。故にわっちは、主様に選択肢を与えんしょう。この切れ端を縁えにしに主様の世界へ帰るかや? 或いは此方に留まり、やがて消えることを選ぶかや?」 これは『運命』を巡る幻想譚。同じ時を過ごせぬ物どもの恋愛譚。 「この世は所詮蝴蝶の夢。合うも不思議、合わぬも不思議。ただ何事もはかない夢の浮世でございんす」 *この作品は純文学×キャラ文芸。二人の人物の視点が三人称と一人称でそれぞれ語られる作風になっております。 *表紙はあさぎかな様にいただいたものです。
読了目安時間:2時間32分