プロフィール

ブックマーク

一覧

  • 飛んでヒに入る夏の虫

    平成最後の夏、何かを成したかったから。

    9,300

    0


    2023年3月30日更新

    暗がりを恐れているのか、灯りが恋しかったのか。それとも君も、死にたかったのか。 白熱灯に触れた羽虫は、ジジッとノイズと共に生命を散らして、地に落ちる。イカロスだっけ、太陽を目指してロウで固めた翼を羽ばたかせたのは。少しだけ似ているかもしれない。 いいな。空を掴めない掌で、太陽に焦がれた。遠い、遠い、蒼穹の中の光への羨望は、日に日に募っていく。 きっと、どこかで野垂れ死んでしまう、羽虫のような存在。死んだって誰も気にかけない、ちっぽけな何か。 夏は嫌い。溶けて消えてしまえとでも言いたげな炎天下が嫌いだった。夏休みの宿題を終わらせなければと焦らされる感覚が嫌だった。何かしなければいけない気がする感覚も嫌で、堪らなく嫌いなのに、夏の終わりが来ると、どうしてか寂しくなるのが、何よりも嫌いだった。 ヒグラシの声に、耳を塞ぎたくなる。毎年同じ臭いのする、別の夏を見てきて、思う。 死んでしまいたいなって。 登場人物 日暮 禅/ヒグラシ ゼン 源氏 蛍/ゲンジ ケイ 薄羽 秋津/ウスバ アキツ

    読了目安時間:1時間13分

    この作品を読む