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初めは綺麗な銀髪に目を奪われた。 真っ白な肌が、不躾に触れる汚いオジサンの手によって青白くなっていくのを見て、咄嗟に助けに入ってしまい、まっすぐに僕を見つめてくる緑がかった蒼瞳に、心さえも奪われた。 ある日、森を彷徨っていた彼女を見つけて、足元に白い菫が不自然に揺れていたのが気になり、魔王である父に問うと、魔界の植物図鑑を投げ渡された。 パラパラとめくると、それはすぐに見つけることができた。 『魔力の強い者の恋心によって咲き、想い人をその者の所へと誘う花』 僕の恋心によってあんな所で雨に晒してしまったことと、僕のものにしたいという感情に呑まれ魔力を与えたことで、熱にうなされる彼女の頬を撫でる。 その熱さに眉を顰め、冷却魔法も交えて額へそっと口付けると、彼女の眉間の皺が減り、安堵した。 「勝手な感情で君に負担をかけた僕は、嫌われて当然かな」 *** 全10話完結。 『悪役を受け入れた魔女は殺しに来た勇者(魔王)に溺愛される』から月日が経った後のお話です。 単体でも読めるので、未読でも問題ありません。 アルファポリス、カクヨムで先行して投稿してます。
読了目安時間:49分